中皮腫・肺がん・石綿肺・びまん性胸膜肥厚などの石綿(アスベスト)労災認定事業場を厚生労働省が公開 労災発生事業場は1万5000ヵ所以上の事業場に

公開日:2020年12月16日

厚生労働省が2020年12月16日に、2019年度にアスベスト(石綿)労災認定された事業場を公開しました。今回の発表分を含めて、石綿労災を発生させた事業場は約1万5000事業場以上にのぼります。今回発表対象となる事業場は、1073事業場でした。

2005年6月、尼崎市のクボタ旧神崎工場周辺住民の中皮腫・肺がんのアスベスト被害が発覚しました。いわゆる「クボタショック」です。それからアスベスト被害の広がりが明らかとなりました。その年の7月29日に厚生労働省は初めて「事業場一覧」を公表し、日本全国に潜在していた被害を明らかにしました。石綿(アスベスト)被害の救済と補償に向けた、大切な情報公開です。一時、厚生労働省は公表を中断しましたが、患者団体やメディアの厳しい批判の声に、2008年3月28日に公表を再開し、現在は毎年、定期的に公開をしています。

今回公表されたアスベスト労災事業所は、2018年度分よりも74カ所多い、749カ所となっています。現在でも劇団俳優・演劇関係者のアスベスト労災(肺がん・中皮腫)のような新たな被害が発覚し、その恐ろしさを物語っています。

今回の発表で注目すべきは、「建設業」に62・8%もの認定者がいたことです。さらに、「製造業」が28・1%でした(船舶製造・修理業、輸送用機械器具製造業など)。今回発表された事業場での被害者は1100人に上りました。死亡者は398人。中皮腫では628人(そのうち、死亡者は234人)で最も多く、肺がんでは347人(死亡者は127人)、びまん性胸膜肥厚では50人(死亡者は16人)となっています。

今回の認定事業場で集計された石綿ばく露作業

今回のアスベスト労災認定事業場で発表された業種は次のとおりです。

石綿鉱山に関わる作業

・石綿糸、石綿布等の石綿紡織製品の製造工程における作業

・石綿セメント、石綿スレート、石綿高圧管、石綿円筒等のセメント製品の製造工程における作業

・ボイラーの被覆、船舶用隔壁のライニング、内燃機関のジョイントシーリング、ガスケット(パ ッキング)等に用いられる耐熱性石綿製品製造工程における作業

・自動車、捲揚機等のブレーキライニング等の耐摩耗性石綿製品の製造工程における作業

・電気絶縁性、保温性、耐酸性等の性質を有する石綿紙、石綿フェルト等の石綿製品又は電解隔膜、タイル、プラスター等の充填剤、塗料等の石綿を含有する製品の製造工程における作業

・石綿や石綿含有岩綿等の吹き付け・貼り付け作業

・石綿原綿又は石綿製品の運搬・倉庫内作業

・配管・断熱・保温・ボイラー・築炉関連作業

造船所内の作業(造船所における事務職を含めた全職種)

・船に乗り込んで行う作業(船員その他)

・建築現場の作業(建築現場における事務職を含めた全職種)

・解体作業(建築物・構造物・石綿含有製品等)

・港湾での荷役作業

・発電所、変電所、その他電気設備での作業

・鉄鋼所又は鉄鋼製品製造に関わる作業

・耐熱(耐火)服や耐熱手袋等を使用する作業

自動車・鉄道車両等を製造・整備・修理・解体する作業

・鉄道等の運行に関わる作業

・ガラス製品製造に関わる作業

・石油精製、化学工場内の精製・製造作業や配管修理等の作業

・清掃工場又は廃棄物の収集・運搬・中間処理・処分の作業

・電気製品・産業用機械の製造・修理に関わる作業

・レンガ・陶磁器・セメント製品製造に関わる作業

・吹付け石綿のある部屋・建物・倉庫等での作業

・エレベーター製造又は保守に関わる作業

・ランドリー・クリーニングに関わる作業

・ガスマスクの製造に関わる作業

・上下水道に関わる作業

・ゴム・タイヤの製造に関わる作業

・道路建設、補修等に関わる作業

映画放送舞台に関わる作業

・農薬、バーミキュライト等を扱う作業 酒類製造に関わる作業

・消防に関わる作業

・歯科技工に関わる作業

・金庫の製造・解体に関わる作業

タルク等石綿含有物を使用する作業

・その他の石綿に関連する作業

・上記の作業の周辺において間接的なばく露を受ける作業

アスベスト労災認定事業場の検索

全国労働安全衛生センター連絡会議では、累計の公開事業場をデータベースにして公開しています。中皮腫や肺がんになられた方で、ご自身で働かれていた事業所がないか不明な方は確認に活用してみてください。

出典:全国労働安全衛生センター連絡会議

参考

厚生労働省 「令和元年度石綿ばく露作業による労災認定等事業場」を公表します