公開日:2020年8月28日

目次

はじめに

 中皮腫患者さんの多くが障害年金を、「私はがんだけど障害者じゃないから」「まだ年金をもらう年じゃないから」などと自分には関係ない事ととらえていますが、実はそうではありません。中皮腫患者さんには年齢も関係なく障害年金を支給されている方はいます。

 ここでは障害年金の概要や請求の流れ、中皮腫患者さんとしてのポイントや、実際に障害年金を支給されている中皮腫患者さんの声などを紹介していきましょう。

障害年金とは

障害年金は、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。
障害年金には「障害基礎年金」「障害厚生年金」があり、病気やケガで初めて医師の診療を受けたときに国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」が請求できます。
なお、障害厚生年金に該当する状態よりも軽い障害が残ったときは、障害手当金(一時金)を受け取ることができる制度があります。
また、障害年金を受け取るには、年金の納付状況などの条件が設けられています。

出典:日本年金機構

障害年金の種類ともらえる金額

障害基礎年金

 障害や病気になって初めて診察を受けた時(初診日)に、国民年金に加入していたが受給できる障害年金です。障害の度合いに応じて、1級と2級が該当します。

支給金額には毎年僅かな変動はありますが、概ね以下の金額です。

1級の場合の年額:779,300円×1.25(月額81,000)+子の加算   

■2級の場合の年額:779,300円(月額65,000)+子の加算 

※子の加算…第1子・2子は一人につき224,500円。第3子以降は一人につき74,800円。このときの子供とは、18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子、もしくは20歳未満で障害等級1級または2級の障害者に限ります。

障害厚生年金  

 障害や病気になって初めて診察を受けた時(初診日)に、厚生年金に加入していた方が受給できる障害年金です。障害基礎年金に上乗せするものとして給付されます。

 障害の度合いに応じて、1~3級に該当します。なお、障害厚生年金を受けるよりも軽い障害の場合には、一時金である障害手当金が支給されます。

■1級の場合の年額:報酬比例の年金額 ×1.25 + 配偶者の加給年金額(224,300円)

■2級の場合の年額:報酬比例の年金額 + 配偶者の加給年金額(224,300円) 

■3級の場合の年金:報酬比例の年金額 もしくは、最低保障額 586,300円

※報酬比例の年金額の計算式

 報酬比例部分の年金額は、1の式によって算出した額となります。なお、1の式によって算出した額が2の式によって算出した額を下回る場合には、2の式によって算出した額が報酬比例部分の年金額になります。

1 報酬比例部分の年金額(本来水準)

報酬比例の年金額の計算式の画像

2 報酬比例部分の年金額(従前額保障)
(従前額保障とは、平成6年の水準で標準報酬を再評価し、年金額を計算したものです。)

報酬比例部分の年金額

出典:日本年金機構_障害年金

障害の種類

 障害は病名に関係なく、法律で定められた「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」に基づいて以下の様に細かく対象と基準が分類されています。

・外部障害:眼、聴覚、鼻腔機能、平均機能、咀嚼・嚥下機能、音声・言語機 能、肢体(上肢・下肢・体幹・脊椎等)

・精神障害

・内部障害:神経系統、呼吸器疾患、心疾患、腎疾患、肝疾患、血液・造血器疾患、代謝疾患、高血圧、悪性新生物(がん)、その他の疾患

※中皮腫の場合、胸膜・腹膜・心膜・精巣漿膜の全てが悪性新生物(がん)の対象になりますが、胸膜中皮腫のみ呼吸器疾患の対象にもなります。

認定基準

■呼吸器疾患による障害については、次のとおりである。

             

障害の程度障 害 の 状 態
1級身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状 が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生 活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状 が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生 活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を 加えることを必要とする程度のもの
3級身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を 加えることを必要とする程度の障害を有するもの

    

    

    

■悪性新生物による障害については、次のとおりである。

             

障害の程度障 害 の 状 態
1級身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状 が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生 活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状 が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生 活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を 加えることを必要とする程度のもの
3級身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を 加えることを必要とする程度の障害を有するもの

出典:国民年金・厚生年金保険障害認定基準

障害年金は働いていてももらえます

 障害厚生年金3級は「労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有する」と定めており、働きながら障害年金を受けられることを表しています。

※実際にフルタイムのお仕事をしながら障害年金を受給されている中皮腫患者さんもいます。

障害年金の請求要件

 障害年金に請求には3つの要件があります。

 ①初診日がはっきりしていること

 ②一定の障害状態にあること

 ③保険料を納付していること

以上の要件を全て満たしていることが請求の条件ですが、②についてはご自身での判断が難しい場合があります。その場合はこちらまでご相談ください。

障害基礎年金請求の流れ

年金請求書を取りに行く

 年金請求書住所地の市区町村役場、またはお近くの年金事務所または街角の年金相談センターの窓口に備え付けてあります。

医師に診断書を依頼する(所定の様式あり)

 障害認定日より3カ月以内の現症のもの(呼吸器疾患の場合はレントゲンも必要)。

必要な書類等を集める

・年金請求書、年金手帳、戸籍謄本、戸籍抄本、戸籍の記載事項証明書、住民票、住民票の記載事項証明書のいずれか(障害年金の請求書類を提出する前1ヶ月以内のものが有効)。

・受診状況等診断書(初診時の医療機関と診断書を作成した医療機関が異なる場合、初診日の確認のため)

・病歴、就労状況等申立書(障害状態を確認するための補足資料)

・受取先金融機関の通帳等(本人名義)

・印鑑

18歳到達年度末までの子ども(20歳未満で障害のある子どもを含む)がいる場合

・戸籍謄本

・子の収入が確認できる書類(義務教育終了前は不要、高等学校等在学中の場合は在学証明書等)

・医師、または歯科医師の診断書(20歳未満で障害のある子どもがいる場合)

請求書の提出 

 提出先は住所地の市区町村役場の窓口になります。なお、初診日が国民年金第3号被保険者期間中の場合は、お近くの年金事務所または街角の年金相談センターになります。

障害厚生年金請求の流れ

年金請求書を取りに行く

 お近くの年金事務所または街角の年金相談センターの窓口に備え付けてあります。

医師に診断書を依頼する(所定の様式あり)

 障害認定日より3カ月以内の現症のもの(呼吸器疾患の場合はレントゲンも必要)。

必要な書類等を集める

・年金手帳、戸籍謄本、戸籍抄本、戸籍の記載事項証明、住民票、住民票の記載事項証明書のいずれか(障害年金の請求書類を提出する前1ヶ月以内のものが有効)。

・受診状況等診断書(初診時の医療機関と診断書を作成した医療機関が異なる場合、初診日の確認のため)

・病歴・就労状況等申立書(障害状態を確認するための補足資料)

・受取先金融機関の通帳等(本人名義)

・印鑑

18歳到達年度末までの子ども(20歳未満で障害のある子どもを含む)がいる場合

・戸籍謄本

・子の収入が確認できる書類(義務教育終了前は不要、高等学校等在学中の場合は在学証明書等)

・医師、または歯科医師の診断書(20歳未満で障害のある子どもがいる場合)

請求書の提出

 提出先は、お近くの年金事務所または街角の年金相談センターになります。

障害年金を請求してから、受給決定の結果が出るまでの時間

 障害厚生年金、障害基礎年金とも、書類が受理されてから約3ヶ月で結果通知が送付されます。

 ただし、書類の提出後に追加書類等がある場合は、それ以上に時間がかかることもあります。

実際に障害年金受給されている中皮腫患者さんの事例

・疾患名:悪性腹膜中皮腫
・性別:男性
・年齢:56歳
・住所地:北海道札幌市
・障害の状態:全身倦怠感、嘔気、食欲不振など
・決定等級:障害厚生年金2級
・疾患名:悪性腹膜中皮腫
・性別:男性
・年齢:45歳
・所在地:北海道稚内市
・障害の状態:大腸転移全摘出、小腸転移一部摘出、人工肛門造設
・決定等級:障害厚生年金3級 
・疾患名:悪性胸膜中皮腫
・性別:男
・年齢:60歳
・所在地:新潟県新潟市
・障害の状態:全身倦怠感、食欲不振、胸痛など
・決定等級:障害厚生年金2級

中皮腫と障害年金制度まとめ

 中皮腫の場合、確定診断が出た時には病気がかなり進行している方も多く、仕事を辞めざるを得ない方もいます。老齢年金と異なり、あまり知られていない障害年金ですが、けがや病気の障害で困っている方の生活を安定させる重要な社会保障制度です。安心した療養生活を送るためにも積極的に障害年金を利用しましょう。

 また、働きながら受給することもできるので、例えば体調を考慮して長く働けない方や力作業が難しい方でも、生活費を年金で補うことができ、安心して療養生活を送ることが出来ます。

 最近は若年時に中皮腫を発症する方も多く、障害年金は若年時にも受給できるので、ご自身が対象と思われる方はぜひ利用しましょう。

 障害年金の手続きは非常に複雑で難しく、個人で請求すると途中で諦めてしまう方もいますので、心配な方はこちらまでご相談ください。

 医師の診断書は、支給決定において大きなウエイトを占めると思われます。日頃から医師とのコミュニケーションは良くしておきましょう。

 ご不明な点等はこちらまでお問い合わせください。