【タイヤ・ゴム関連業におけるアスベスト(石綿)含有のタルクによる被害で中皮腫や肺がんを発症】労災・団体交渉・裁判をめぐる動き

ベビーパウダー(タルク)をめぐる被害について以前触れましたが、中皮腫をはじめとするアスベスト被害においては、神戸市のタイヤ製造大手「住友ゴム工業」の元労働者の被害が注目を集めています。

2019年7月19日には、大阪高等裁判所が元従業員7人が中皮腫や肺がんを発症したとして、遺族が住友ゴム工業に損害賠償を求めた訴訟で全員の賠償を認め、合計約1億円の支払いを命じています。判決では、昭和24年の時点で高濃度のタルク粉じんが工場内に飛散しているとした当時の報告書から因果関係が認められています。

出典:https://mainichi.jp/articles/20190719/k00/00m/040/298000c

住友ゴムでは「当社におけるアスベスト(石綿)の使用状況およびアスベスト関連問題への対応状況について」を公表していますが、判決の内容からすると、公表している同社の石綿使用の時期とずれがあることがわかります。

住友ゴムとアスベスト被害をめぐっては2011年に最高裁が、同社の退職者および遺族が住友ゴムとの団体交渉権を認めなかった兵庫県労働委員会の決定の取り消しを求めた訴訟で、1審の大阪地裁と2審の大阪高裁の判決を支持し、「退職後から合理的な期間内に申し入れされた場合には認めるべきだ」として元労働者の団体交渉権を認めています。

出典:2011年11月16日、大島秀利「石綿被害:退職者に団体権確定 最高裁初判断」毎日新聞

中皮腫や肺がん、石綿肺やびまん性胸膜肥厚を発症したアスベスト被害者の中には、裁判をせずに団体交渉で賠償問題を解決したり、あるいは、労災認定等のために会社に情報開示を求めたり元同僚への健康診断を求めることをしています。

裁判関連では別に、ゴムの精錬・配合作業に関連した被害が起こされています。被害を主張された会社では、精錬・配合したゴム同士の防着等のためにタルクを使用していた、とされています。

出典:http://asbestosaitama.org/%E3%82%B4%E3%83%A0%E7%B2%BE%E9%8C%AC%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%83%99%E3%82%B9%E3%83%88%E4%BA%8B%E4%BB%B6/

厚生労働省も「タルク等石綿含有物を使用する作業」として、「ゴム製品製造、タイヤ製造、紙・紙器製造、断裁、医薬品製造、化粧品製造」をあげています。あわせて、バーミュキュライト(ひる石)、パーライト(真珠岩)、繊維状ブルサイト(水滑石)を使用する作業などにも注意を示しています。

石綿に関する健康管理等専門家会議マニュアル作成部会「石綿ばく露把握のための手引き」(2006年10月)


中皮腫患者さんやご家族の中に、「原因がよくわからないんです」という方々がおられます。じっくりお話を伺うと、原因がある程度判別でき、労災認定に結びつく方も決して少なくありません。また、団体交渉や裁判はアスベスト問題にコツコツと取り組んできた労働組合や弁護団と取り組むことが大切です。まずご相談ください。