【中皮腫・肺がん・石綿肺(アスベスト肺)・びまん性胸膜肥厚の発症と建設業におけるアスベスト被害】埼玉・型枠大工さんの事例

中皮腫・アスベスト被害の最大業界

中皮腫・肺がん・石綿肺(アスベスト肺)・びまん性胸膜肥厚などのアスベスト(石綿)被害がもっとも多い業種が何かご存知でしょうか。

日本過去に輸入した石綿の量は1000万トンを越えるとされており、そのうち約9割が建設資材にとして建設現場で使用されてきています。2018年12月19日に厚生労働省が発表した「平成29年度 石綿による疾病に関する労災保険給付などの請求・決定状況まとめ(確定値)」では、労災認定された987件のうち建設業が554件を占めています。

建設業のアスベスト被害といっても職種は多様

「クボタ・ショック」が発端となったアスベスト問題が社会問題化した2005年の「主要労働統計表」からは当時で全産業に占める建設業の就労人数の割合が約7パーセントとなっています。しかしながら、アスベストをめぐる労災認定では全産業の半数以上を建設業が占めており、被害の実態を端的に表しているかと思います。建設業と一口に言っても、職種としては「はつり・解体工」、「左官」、「築炉工」、「電気工」、「塗装工」、「内装工」、「保温工・断熱工」、「大工」、「吹付工」、「事務」、「配管工」、「型枠工」、「屋根・外壁工」、「とび工」、「電工補助」、「現場監督」など多種にわたります。

建設アスベスト訴訟で問われる国や建材メーカーの責任

そのような背景から、国と建材メーカーを相手取った「建設アスベスト訴訟」が2008年東京地裁を皮切りに、横浜、札幌、京都、大阪、福岡の6地裁に提訴され、それぞれが2陣訴訟も提訴されています。現在では、東京、横浜、京都、大阪の各1陣が最高裁で、札幌陣1、横浜2陣、福岡1陣がそれぞれ高裁で、ほかは各地裁で係争中です。全国12訴訟、被災者700名ほどの被災者にのぼっています。

建設アスベスト訴訟では、国と建材メーカー(企業)の責任が認められるかどうか、建設現場では多数いる法的に労働者でないとされる「一人親方」について責任が認められるかどうか、が大きな焦点となっています。国について、責任内容・時期の違いはあるものの最初の横浜地裁判決を除く10の判決で責任が認められています。企業については、東京高裁1陣判決では認められませんでしたが、大阪高裁京都1陣・大阪2陣の二つの判決では認められました。一人親方については、3つの高裁判決ではいずれも認められており、2019年3月29日の大阪2陣追加提訴においては、一人親方、個人事業主も積極的に参加しています。スレート工事による石綿肺によって45歳で亡くなった方の遺族も原告に加わっています。この方の場合は、労災保険の特別加入をしていない一人親方期間が長かったために労災認定されず、石綿救済法の適用しかなかったケースで、建設アスベスト被害者の置かれた状況の難しさを示しています。建設アスベスト訴訟では、国と建材メーカー(企業)の責任が認められるかどうか、建設現場では多数いる法的に労働者でないとされる「一人親方」について責任が認められるかどうか、が大きな焦点となっています。

この訴訟が最終的に勝利するのか、また、どのように勝利するのか、まだまだ予断は許しません。しかし、国と企業の責任を問う以上、その結果が建設現場でのアスベスト被害のみならずアスベスト被害者全体の補償・救済進展への契機の一つになっていくことは間違いないと強く期待しています。

建設業のアスベスト被害の具体例

数年前、埼玉にお住いのAさんから、「肺がん(扁平上皮がん)と診断されている。建設業で働いていた。アスベストを吸っていたが、一人親方なので労災は難しいと思う」と問い合わせを頂いたことがありました。お話を伺うと、10代後半から十数年ほど2つの零細企業で型枠大工として働いていたことがわかりました。型枠大工でしたが、現場では耐火材の吹き付け、石綿被覆管の加工、化粧ボードの加工、スレート版の加工、モルタルの投入等によって、石綿が飛散している環境でした。また、鉄骨解体工事もしていました。千葉県内某市の消防本部庁舎建設事業などの現場があるこということも確認できました。労災請求後、会社は廃業していましたが、会社関係者の方の協力も得ることができました。

また、病状については、肺がんのほかに、石綿肺も罹患し、広範囲な胸膜プラークの所見もありました。30代で独立しましたが、労災特別加入はしていませんでしたので、亀戸労働基準監督署に労災請求して数ヶ月後には決定されましたが、労災関係給付額に関係してくる平均賃金は、労働者であった時代を基礎にするもので比較的低額となってしまいました。

Aさんは病状がかなり悪化した段階でご連絡を頂きましたが、なんとかご本人の証言などを得ることができました。早い段階で多くのお話ができれば、労災認定そのものはもちろんですが、適切な給付額に結びつくようなご助言等も差し上げることができます。どのような内容でも気になる点があればお問い合わせください。