中皮腫とは〜原因・症状・診断・治療・予後・生存率・セカンドオピニオン
更新日 : 2020年11月11日
公開日:2019年1月1日
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目次
中皮腫が発生する部位
中皮腫(ちゅうひしゅ、英: Mesothelioma)の“中皮”とは「肺、心臓、胃腸・肝臓などの臓器を包む胸膜(肺)・心膜(心臓)・腹膜(腹部臓器)・精巣鞘膜(精巣漿膜)という膜」のことで、この中皮から発生したがん(悪性腫瘍)を中皮腫といいます。発生の理由については解明されていません。中皮腫が発生する比率は胸膜が約80%、腹膜が約20%、心膜が約1%、精巣鞘膜が約1%となっています。
いわゆる「がん」は、上皮性悪性腫瘍と非上皮性悪性腫瘍に分けられます。上皮は皮膚や粘膜、臓器を覆う細胞など、広い意味で言えば体の表面を覆うものです。上皮性悪性腫瘍には肺がん、胃がん、肝臓がん、乳がんなどが含まれます。
一方で、中皮腫は非上皮性悪性腫瘍に位置付けられます。中皮や内皮が、非上皮には含まれます。中皮には胸膜・腹膜・心外膜が、内皮には心臓・血管・リンパ管などが含まれます。中皮腫のほかには、白血病や肝臓血管肉腫があります。
胸膜の中皮腫
胸膜は、壁側と臓側の二つが重なっています。心膜・横隔膜の表面にも壁側胸膜があります。壁側胸膜は肺の全体を覆う膜です。胸膜中皮腫においては、壁側胸膜から腫瘍が発生して、臓側胸膜や肺、横隔膜、心膜、胸郭に進展します。局所的な浸潤が強いですが、遠隔転移の頻度は肺がんよりも低いとされ、その割合が2%程度とされる報告もあります。
出典:「胸膜中皮腫に対する新規治療法の臨床研究に関する研究」班:患者さんとご家族のための胸膜中皮腫ハンドブックより
腹膜の中皮腫
腹膜中皮腫は、漿膜上皮細胞由来の間葉系悪性腫瘍です。 腹膜も胸膜同様に中皮細胞からつくられており、腹膜中皮腫はおなかの内側をおおっている腹膜の中皮細胞ががん化したものです。なお、「腹膜がん」は同じように腹膜から生じるがんですが別の疾患です。
古くは1908年にMillerらによって、腹膜から発生したムチン腹水を産生する悪性腫瘍として報告されました。
出典:Medical Note 腹膜偽粘液腫ってどんな病気? 腹膜内にゼリー状の粘液が散らばる病気について解説
心膜の中皮腫
心臓は、二層の袋状の膜に包まれていますが、それを「心膜」と言います。心膜中皮腫は心臓を覆う心膜に発生する悪性腫瘍です。胸膜中皮腫や腹膜中皮腫と比較しても発生数は極めて少なく、精巣鞘膜と合わせて中皮腫全体の1パーセント程度とされています。
精巣鞘膜の中皮腫
精巣と精巣上体をおおう鞘膜を精巣鞘膜と言います。そこに発生する悪性腫瘍が精巣鞘膜中皮腫です。心膜と合わせても中皮腫全体の1パーセント程度とされています。
出典:船戸和弥のホームページ-慶応義塾大学医学部解剖学教室
中皮腫の病理分類と定義
日本肺癌学会が発行している『肺癌取扱い規約』(第8版)によれば、中皮腫には「びまん性悪性中皮腫」、「局限型悪性中皮腫」、「高分化乳頭型悪性中皮腫」、「アデノマイド腫瘍」に大きく分類されています。下記は同規約で整理されている分類とその定義になります。
1)びまん性悪性中皮腫(Diffuse malignant mesothelioma)
【定義】中皮腫細胞への分化を示す細胞が、胸膜に沿ってびまん性に広がる悪性腫瘍。
(1)上皮型中皮腫(Epithelioid mesothelioma)
【定義】上皮性の形態を示すびまん性悪性腫瘍。
(2)肉腫型中皮腫(Sarcomatoid mesothelioma)
【定義】紡錘細胞の形態を示すびまん性悪性中皮腫
(3)繊維形成型中皮腫(Desmoplastic mesothelioma)
【定義】密な膠原線維の増生を伴いつつ、悪性中皮細胞が花むしろ状あるいはpatternless patternを示して増殖する像により特徴付けられるが、少なくともこれらの膠原線維が50%を超えなければならない。
(4)二相型中皮腫(Biphasic mesothelioma)
【定義】上皮型あるいは肉腫型を示す成分が少なくとも10%以上存在するびまん性中皮腫
2)「局限型悪性中皮腫」(Localized malignant mesothelioma)
【定義】肉眼的に明瞭に限局化された結節性病変として認識される、稀な中皮腫である。肉眼的あるいは組織学的には胸膜ひょうめんへのびまん性進展はみられない。しかし、組織学的、免疫組織化学的、そして超微形態学的には、腫瘍細胞の性質はびまん性悪性腫瘍と同様である。
3)「高分化乳頭型悪性中皮腫」(Well-differentiated papillary mesothelioma)
【定義】異形性のない細胞が乳頭状構造を示し、浸潤を示さずに胸膜表面に向かって増殖する、稀な中皮細胞由来の腫瘍である。本腫瘍は、乳頭状パターンを示すびまん性上皮型悪性中皮腫と、臨床的、形態学的、そして、予後的に異なる別の腫瘍である。
4)「アデノマイド腫瘍」(Adenomatoid tumour)
【定義】他部位(特に女性生殖器)に発生するアデノマイド腫瘍と組織学的に同様の形態を示す、中皮細胞に由来する腫瘍である。臓側、壁壁胸膜のいずれからも発生し得る。胸膜のアデノマイド腫瘍の報告はきわめて稀である。
中皮腫の病理組織診断(確定診断)の困難性
しかし、『石綿関連疾患の病理とそのリスクコミュニケーション』では、「中皮腫診断の経験豊富な5名の病理医が自施設から計82例の中皮腫例を持ち寄り、一致した例は67例(81.9%)であり、約2割の症例で組織亜型一致しなかった」、「分化度の低い上皮型と肉腫型、肉腫型と線維形成型、肉腫型と退形成型で意見の分かれる例の割合が多い傾向があった。コンセンサス診断はディスカッション顕微鏡でともに検鏡し免疫組織化学的染色標本も検鏡して合議で下した最終判断である。このように比較的中皮腫診断の経験豊富な病理医であっても現状の組織亜型分類の一致性には困難性があることから、今後、中皮腫の病理診断に関してはその亜型分類を含めた中央診断や、インターネット(バーチャルスライドシステムを含む)を用いた中皮腫の病理診断に関するコンサルテーションシステムの構築やチュートリアルコンテンツの作成などが必要などと考えられる」としています。
中皮腫の原因
中皮腫発生の要因は、そのほとんどがアスベスト(石綿)を吸ったことが原因です。すなわち、アスベストが原因物質です。喫煙は無関係です。そのため、中皮腫と診断された方は労災制度や石綿救済制度などのいずれかの制度で請求(申請)をすれば必ず認定を受けることができます。これまでに著名人・有名人として小説家・放送作家の藤本義一さん、漫画家の戸部けいこさん、劇作家・評論家の山崎正和さんなどが中皮腫を発症されたことを発表されています。
アスベスト(石綿)繊維を吸収すると、アスベストを貪食したマクロファージ(血液中の白血球のうちの単球の一種)が活性酸素してトランスフォーミング成長因子 (TGF)-β、血小板由来増殖因子などを産生します。線維化プロセスが促進されて、線維化の延長線上で発がん化が起こります。
石綿を吸った確実な証拠として、画像所見において良性の病変である「胸膜プラーク」がみられることがあります。これ自体、肺の機能へ影響を与えたり、がん化するものではありません。環境省の中皮腫登録事業の集計では中皮腫1,506例に対して、1,170例(77.7%)には胸膜プラークが見られなかったという報告もあり、胸膜プラークが中皮腫発症リスクを高めているとはただちに言えません。
アスベストを吸ってから中皮腫が発生するまでの期間はとても長く、25年から50年程度(平均で40年ほど)経ってから発生するとされています。アスベストを吸った量と発症における「しきい値」がないとされており、比較的少ない量のばく露でも発症する可能性があります。アスベストには大きく2つの鉱物グループに分けることができますが、蛇紋石族グループに属する白石綿(クリソタイル)よりも、角閃石族に属する青石綿や茶石綿の方が高い発がん作用があるとされています。現在、年間で1500人程の方が中皮腫によって犠牲になっています。
出典:中皮腫ポータルサイトみぎくりはうす 埼玉:蛇紋岩で造園業の男性が、アスベスト(石綿)肺がんで労災認定〜蛇紋岩が原因で中皮腫や肺がん、石綿肺、びまん性胸膜肥厚に罹患する可能性
中皮腫の初期症状
胸膜中皮腫の初期症状
症状は胸痛、息切れ、胸の締めつけ、咳(せき)、大量の胸水による呼吸困難や胸部圧迫感、労作時呼吸困難があります。また、原因不明の発熱や体重減少がみられるときもあります。病初期においては無症状の場合もあり、検診で発見されることもあります。胸膜中皮腫の場合、腫瘍が胸壁に浸潤してくると背中や胸の痛みが生じ、全身倦怠感や体重減少、発熱がみられることもあります。
腹膜中皮腫の初期症状
腹膜中皮腫では、腹痛や腹部膨満感(お腹の張りのような感覚)、腰痛、腹部のしこりなどもみられます。また、食欲低下や排便の異常などが出る場合もあります。ただし、これらは中皮腫に特徴的な症状とはいえず、そのため検診のあり方などが確立されているわけでもなく、腹腔内の疾患のため早い段階では症状が出ず、早期発見が難しい病気です。
心膜中皮腫の初期症状
心膜中皮腫では、初期症状として特に認められるものはありません。病気の進行によって「心タンポナーデ」の状態(心囊にがん細胞が影響して体液が溜まった状態)となり、軽度の運動(階段の上り下り等)での息切れ、強い動悸を感じるなどの症状を引き起こします。
精巣鞘膜中皮腫の初期症状
精巣鞘膜において初期には特別な症状は認められません。腫瘍の進行によって睾丸の圧痛・腫脹などがあらわれます。
中皮腫の診断
胸膜中皮腫の診断
中皮腫は、特異的な症状・検査での所見に乏しいため、診断が難しい疾患です。中皮腫以外の腫瘍でも画像上では中皮腫と似たような発育をしていくことがあります。そのため組織診断による病理学的な確認が求められ、他疾患との鑑別も適切に実施される必要があります。
確定診断には、可能なかぎり全身麻酔胸腔鏡下胸膜生検をすることが推奨されており、胸膜生検によって組織診断による組織亜型や病変の浸潤度まで診断をつけることが望ましいとされています。逆に、末梢血中のマーカー測定や胸水中の腫瘍マーカーやヒアルロン酸の測定による確定診断は推奨されていません。また、迅速組織診で中皮腫と診断された事例の診断のたしからしさを検証した研究では、少なからず誤診例もみられるなどの報告もあり、推奨されていません。
胸腔鏡下で生検を実施する場合、画像ガイド下針生検で4%、外科的生検で22%で播種の発生率が指摘されている報告もあり、外科的生検をおこなう場合は必要性を十分に検討して小切開での実施が望ましいとされています。経験が豊富な病理医であっても診断が難しいことがあり、臨床医や放射線科医を含めて、石綿ばく露歴や画像の経過、胸水の推移などから慎重に検討されます。
病理組織診断が実施されていない場合、通常は中皮腫の判定ができませんが、細胞診断が実施されている場合に、胸水などの検査結果や画像所見を総合的に踏まえて判定できる場合もあります。
病理分類としては大きく、びまん性悪性中皮腫(胸膜に沿って腫瘍が発育するもの)と限局性悪性中皮腫(胸膜の一部にかたまりを形成して腫瘍が発育するもの。症例としてはこれまでに50例ほど)があり、このうち上皮型(約60%)・肉腫型(約20%。全中皮腫のうち約2%にあたる繊維形成型含む(びまん性中皮腫のみ))・二相型(約20%)に分けられます。なお、腹膜中皮腫では、大部分は上皮型、二相型は頻度が低く、肉腫型は稀とされています。これら以外に、WHO分類(2015)では、高分化乳頭状中皮腫とアデノマトイド腫瘍が位置付けられています。病理分類によって、進行の速さや抗がん剤治療の奏功率に違いがあるとする研究もあります。胸膜中皮腫を含め、「肺がん」とは発生部位が異なり、がん細胞の性質・症状なども違うことから治療方法(中皮腫の治療について)も異なります。
腹膜中皮腫の診断
腹膜中皮腫においても胸膜中皮腫と同様に、画像検査や採血(CA125値、CA15-3などが高いことが多い)の結果は、他疾患との鑑別する上では大切な検査ですが確定診断をすることはできません。生検による確定診断が必要となります。胃がんや大がんなどの消化器がん、腹膜がんとの鑑別には婦人科での診察や内視鏡検査も重要となります。また、超音波検査では、腹水・腹膜の肥厚なども診断の助けとなります。腹水・腹膜の肥厚や結節はCT検査でもわかることがあります。
CT画像上では、腹水型、腫瘤形成型、混合型に分類されます。腹水型の場合はがん性腹膜炎との鑑別が必要です。腹水細胞診の陽性率は5〜12パーセントと低く、原発が不明な難治性腹水において、FDG-PET検査の有用性も報告されています。
腹水検査や腹水細胞診で中皮腫を疑う所見を示すのは50パーセント程度とされているため、あくまでもそれらの検査は診断の補助的役割となります。診断には、腹腔鏡や開腹での組織生検が通常は実施され、超音波ガイド下において病変を疑われる部分を生検できた場合で90パーセント程度で正確な診断が可能とする報告もあります。
病理組織検査では、胸膜中皮腫と同様に、上皮型・肉腫型・二相型の3つのタイプに分けることができ、上皮型は経過や治療反応性が良好とされています。
心膜中皮腫の診断
胸膜中皮腫や腹膜中皮腫と同様に、画像検査や血液検査で確定診断はできません。病変部位の生検による組織採取によって確定診断が必要です。
精巣鞘膜中皮腫の診断
他の中皮腫と同様に、画像検査や血液検査で確定診断はできません。病変部位の生検による組織採取によって確定診断が必要です。
中皮腫のステージ診断
胸膜中皮腫の病期分類(腹膜・心膜・精巣鞘膜の病期分類はまだ決められていません)
※図(悪性胸膜中皮腫の臨床病期(ステージ))については、日本肺癌学会編(2019)『患者さんのための肺がんハンドブック 悪性胸膜中皮腫・胸腺腫含む』金原出版、p.153より転載。金原出版株式会社・転載許諾済
I 期
片側の胸膜注)にのみがんがある(リンパ節転移や離れた臓器への転移がない)
Ia期:外側の胸膜(壁側胸膜:へきそくきょうまく)にのみがんがある
Ib期:内側の胸膜(臓側胸膜:ぞうそくきょうまく)にがんが広がっている
II 期
片側の胸膜にのみがんがあり、横隔膜の筋層や肺に広がっている
(リンパ節転移や離れた臓器への転移がない)
III期
同側のすべての胸膜ががんに侵され、周囲に広がっている状態であるが、手術治療の可能性が残されている。がんのある側のリンパ節に転移があるが、胸腔外には転移していない状態
IV期
がんが胸壁、縦隔、横隔膜下などに広がり、切除することができない状態まで広がっている。反対側のリンパ節や胸腔外に転移している
中皮腫の治療選択とセカンドオピニオン
中皮腫の進行の程度や他の臓器などへの転移の有無、医師や医療機関の経験値で治療内容が異なるために、病気の状況を把握するため担当医以外の医師から意見を聞く「セカンドオピニオン」を活用するなど、医師との十分なコミュニケーションを心掛けましょう。セカンドオピニオンは中皮腫の診療・治療をおこなっている施設、中皮腫治療の専門医に意見を求めるのが大切です。担当医にセカンドオピニオンの意思を伝えていただき、紹介状や画像の準備をしてもらいましょう。費用は病院によって異なりますが、60分を限度に、2〜4万円程度です。
セカンドオピニオンでは、①予定している治療の効果や他の治療方法の有無、②治療効果に対しての副作用等のリスク、③治療後の日常生活への影響や予後、④これらを総合的に検討した場合の治療の意義、などについて質問をしてみましょう。患者さんご本人が情報を集めるためのアンテナを張って、抱いている気持ちを伝えることも大切です。医療機関などによっては新薬の治験を実施している場合もあります。治験では、安全性や有効性、使用法等を確認する3つの段階があります。臨床試験の最新情報も定期的に更新されますので、そのような情報も踏まえ、ご関心のある方は必ず主治医に相談した上で参加の有無を判断しましょう。
治療方針について、患者さんとご家族で意見が異なることも珍しくありません。例えば、「副作用による日常生活への影響が心配だ」と思う患者さんに対して、「できる限りの治療を積極的にしてほしい」とご家族が希望するケースもあります。ご家族からすれば、病気を治してもらいたい一心から来る気持ちですが、だからこそ嫌だと言い出しにくい場合もあります。まずは、できるだけ冷静になり、患者さんとご家族それぞれの思いや考えを語り合うことが大切です。最終的に治療を受けるのは患者さんであり、ご本人の希望が尊重されるよう無理強いをせず、意見が分かれる場合でも患者さんの治療方針の考えにまずは耳を傾けてみましょう。
中皮腫のセカンドオピニオンの際の質問リスト例
一例ですが、セカンドオピニオンでは次のような点について聞いてみてください。
- 中皮腫の種類はなんですか?(上皮型・二層型・肉腫型など)
- 中皮腫はどこにあって、どのくらいひろがっていますか?
- 病期はどの程度ですか?
- ほかにも必要な検査はありますか?
- どのような治療を勧めますか?ほかの治療はありますか?その治療を勧める理由を教えてください。
- 中皮腫の痛みやつらさにどんな対応ができますか?
- 治療を選択した場合に起こりうる合併症や副作用、後遺症について教えてください。それに対する治療や対処の仕方はありますか?
- これまでどおりの生活を続けることはできますか?
中皮腫の予後と生存率
中皮腫の診断をされた多くの方が、予後・余命について厳しい情報を伝えられたり、インターネット上でも同じような情報に溢れています。しかし、決して少なくない数の方がそのような一面的な情報とは異なる形で療養生活を送っています。そのような方々も当初は、予後・余命について多くの方と同じように後ろ向きな情報にしかアクセスできませんでした。中皮腫患者であっても、中皮腫サポートキャラバン隊のような当事者の体験談からは長生きされている方のものも含めて、ごく普通の日常生活を送るためのヒントが得ることができます。また、家族にできることなども参考にしてください。QOLやADL、リハビリに関する情報を確認していただくことも有意義だと考えます。
患者さんとご家族のまわりには医師(内科医、外科医、緩和ケア医、精神・診療内科医、かかりつけ医等)、看護師、薬剤師、医療ソーシャルワーカー、リハビリテーション専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、義肢装具士等)、管理栄養士、カウンセラー(臨床心理士)、精神保健福祉士、介護福祉士、ケアマネージャー、ホームヘルパーなどさまざまな専門スタッフがいます。その時々のニーズに合わせてアドバイスを求めることもできます。介護保険制度の利用などについても相談してみましょう。
【参考文献】
>国立がん研究センター がん情報サービス-中皮腫 基礎知識-
>国立がん研究センター 希少がんセンター -悪性胸膜中皮腫-
>がん情報サイト Cancer Information Japan -悪性中皮腫の治療(PDQ®)-
>国立がん研究センター がん情報サービス -中皮腫 検査・診断-
>井内康輝編(2015)『石綿関連疾患の病理とそのリスクコミュニケーション』篠原出版新社
>石綿・中皮腫研究会ほか編(2018)『中皮腫瘍取扱い規約』金原出版
>環境省 医学的判定に係る資料に関する留意事項(平成29年6月29日一部改定)
>国立がん研究センター希少がんセンター 悪性心膜中皮腫(あくせいしんまくちゅうひしゅ)
>国立がん研究センター希少がんセンター 悪性精巣鞘膜中皮腫(あくせいせいそうしょうまくちゅうひしゅ)
>特定非営利活動法人 日本肺癌学会編『臨床・病理 肺癌取扱い規約』【第8版】(2017)、金原出版
>菊池由宣ほか「2. 腹膜悪性中皮腫」『外科』第77巻第10号
>菊池由宣ほか「腹膜悪性中皮腫の化学療法」『癌と化学療法』第39巻第5号
アスベスト(石綿)と被害の発生状況
アスベスト(石綿)は、天然にできた鉱物繊維で「せきめん」「いしわた」とも呼ばれています。「繊維状鉱物」が広義のアスベストの定義になります。
石綿の種類と性質
蛇紋石族:クリソタイル(白石綿、chrysotile)
角閃石族:アモサイト(茶石綿、amosite)、クロシドライト(青石綿、crocidolite)、トレモライト石綿(tremolitea asbestos)、アクチノライト石綿(actinolite asbestos)、アンソフィライト石綿(anthophylite asbestos)
極めて細い繊維で、熱、摩擦、酸やアルカリにも強く、丈夫で変化しにくいという特性を持っていることから、建材(吹き付け材、保温・断熱材、スレート材など)、摩擦材(自動車のブレーキライニングやブレーキパッドなど)、シール断熱材(石綿紡織品、ガスケットなど)といった様々な工業製品に使用されてきました。
石綿の用途・使用量
アスベストを吸い込むことで中皮腫・肺がん・石綿肺・びまん性胸膜肥厚・良性石綿胸水などを発症する可能性が高まることが知られており、日本では1930年から2005年にかけて合計約1000万トンという大量のアスベストが輸入されて、8割以上は建材に使用されたと言われています。
そのために中皮腫などの疾患は発症までの潜伏期間が長いことから当時、建設業・製造業・自動車整備業などのアスベストを取り扱う環境に従事していた人やアスベストが使われいる建物内で過ごしていた人の健康被害が現在になって危惧されている状況です。日本での中皮腫発生のピークは2030年頃で、罹患者数は年間3,000に及ぶと予測されています。
有名人として、小説家や放送作家として活躍した藤本義一さんやの俳優のスティーブ・マックイーンさんなども中皮腫に罹患しました。
被害の発生状況
以下の図は、日本の中皮腫死亡者数の推移です。近年では1500名前後で推移しています。中皮腫を含む、日本でのアスベスト被害に関して国際的な研究プロジェクトとしてアメリカ・ワシントン大学の保健指標評価研究所が取りまとめた「世界疾病負荷」(GBD)では2019年の年間死者数が2万人超との発表がされています。これは、アメリカと中国に次いで3番目の多さであり、改めて「被害大国」である現実を突きつけられています。
【参考資料】
>独立行政法人 環境再生保全機構 -アスベスト(石綿)健康被害の救済-
>柳楽未来、2020年11月2日「日本の19年石綿関連死者数、推計2万人超 研究機関調査」『毎日新聞』
>全国労働安全衛生センター連絡会議 【速報】日本のアスベスト(石綿)死は毎年2万人超、世界第3位のアスベスト被害大国-最新の世界疾病負荷推計/2020年10月17日更新