悪性胸膜中皮腫に対するオプジーボ(一般名:ニボルマブ)とヤーボイ(一般名:イピリムマブ)の併用療法における使用法に関する専門家の考え方

2021年5月27日に悪性胸膜中皮腫に対するオプジーボとヤーボイの併用療法は厚生労働省の承認を受けました。「最適使用推進ガイドライン(悪性胸膜中皮腫)」に従って各医療機関において使用されています。中皮腫サポートキャラバン隊では、本併用療法に関して中皮腫治療の経験が豊富な医療機関の医師に対して、使用方法に関する質問をしました。

目次 [非表示]

悪性胸膜中皮腫に対するオプジーボとヤーボイの併用療法に関する専門家への質問

今回、専門家へ投げかけた質問は以下の内容です。

Q 現時点で、胸膜中皮腫と診断され、治療をのぞむ患者には、手術が難しい場合は副作用や組織型を考えずに無条件でアリムタとシスプラチン2剤の化学治療よりもイピニボ併用療法を一次治療として第一選択すべきものであるとお考えでしょうか。

悪性胸膜中皮腫に対するオプジーボとヤーボイの併用療法に関する専門家の回答

以下の意見は、あくまで医師個人の見解であり、使用にあたっては主治医をはじめとする関係者と十分にコミュニケーションを図って治療選択をしてください。セカンドオピニオンを利用して、経験豊富な医療機関の医師の意見を聞くという選択肢もあります。

国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科外来医長 後藤悌医師

上皮型はシスプラチン+ペメトレキセドの方が良いくらいかと思っています。
世界では日本だけシスプラチン+ペメトレキセドが終わった後にニボルマブが投与できるために、治験(注)よりも良い成績が期待できます。
治験では、化学療法群の20%しか化学療法後に免疫療法を受けていません。
イピリムマブ+ニボルマブは副作用が懸念事項ですので、それを説明した上で希望する場合には、もちろんそれでも良いと思っています。
非上皮型では化学療法群の成績が著しく不良であるために、イピリムマブ+ニボルマブが明らかに有効となっています。
胸膜中皮腫において、ニボルマブ単剤と比較してイピリムマブ+ニボルマブの方が治療成績が良いとは結論づけられていません。
また他のがんでも、ニボルマブ単剤治療後のニボルマブ+イピリムマブの有効性については有効性(副作用の影響含む)は示されていません。

注:無作為化フェーズ3試験CheckMate-743試験

兵庫医科大学病院 呼吸器内科診療部長 木島貴志医師

CM743試験は、切除不能な進行・再発症例を対象に一次治療における現在の標準治療であるCDDP+PEM(注)に対するIpi+Nivo(注2)の優越性を検証した試験で、プライマリエンドポイントである上皮型と非上皮型を合わせた全症例での全生存期間(OS)において優越性が証明できたことから、Ipi+Nivoは一次治療の新しい第一選択と考えてよいと思います。ただし、サブ解析ではありますが、上皮型ではOSに有意な差がなく、Ipi+Nivo群ではむしろ早期増悪や死亡のリスクが高いこと、CDDP+PEM群では二次治療でNivo単剤が使用可能なことから、CDDP+PEMも一次治療として考慮すべきと考えます。一方、非上皮型ではIpi+Nivoが上皮型よりもよく効くからと言うよりCDDP+PEMが効きにくいため差が歴然としており、Ipi+Nivoが初回治療の第一選択になると思います。当施設では、厚生労働省の最適使用推進ガイドラインに則り、添付文書等に基づいた適正使用に努めます。

注:CDDP=シスプラチン。PEM=アリムタ(一般名:ペメドレキセド)

注2:Ipi=ヤーボイ(一般名:イピリムマブ)。Nivo=オプジーボ(一般名:ニボルマブ)

岡山ろうさい病院 呼吸器内科部長 藤本伸一医師

「副作用や組織型を考えずに無条件で」というのは少し極端ですが・・

イピニボ併用療法は、臨床試験全体で、主たる評価項目である生存期間が化学療法(アリムタ+プラチナ)に比べ延長するとの結果が出ていますので、第一選択となります。特に非上皮型はもともと化学療法の効果が芳しくないので、それほど選択を迷うことなくイピニボが選択されると思います。上皮型の場合も原則としてイピニボを選択することと思いますが、何らかの理由(イピニボの副作用に対する懸念、新しい治療であることに関連する懸念、医師・施設の使用経験などでしょうか)により化学療法が選択される可能性はあると思います。あとは今後実際に臨床現場で投与されることで蓄積される使用経験(有効性や安全性情報等)によっておのずから定まってくるのではないかと思います。

参考資料

小野薬品工業株式会社 オプジーボとヤーボイの併用療法 「切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫」への適応拡大に対する製造販売承認事項一部変更承認を取得

・海外でのオプジーボ/ヤーボイ併用療法の報告(MAPS2試験)。こちらは海外で実施された既治療の悪性胸膜中皮腫患者さんを対象とした無作為化第Ⅱ相試験
Nivolumab or nivolumab plus ipilimumab in patients with relapsed malignant pleural mesothelioma (IFCT-1501 MAPS2): a multicentre, open-label, randomised, non-comparative, phase 2 trial

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です