悪性胸膜中皮腫(肉腫型)患者としての治療経験

兵庫県 尾上一郎

悪性胸膜中皮腫の診断と抗がん剤治療

私が2017年8月25日に胸腔鏡の結果、悪性胸膜中皮腫との確定診断をもらってからオプジーボまでの経過を報告します。中皮腫の診断確定後、腫瘍の種類が肉腫型で手術はできない、余命は6か月との診断の上、抗癌剤治療となりました。

第1回目の抗癌剤、シスプラチン+アリムタを9月19日より開始、強烈な副作用と戦いながら2018年の2月まで6回の抗癌剤治療を行いました。先生より腫瘍が今のところ、大きくはなっておらず、現状維持できていることは大変良い状態であるとの話を頂き、第1回目のプラチナ製剤による抗癌剤治療が完了しました。

その時点で今後の治療についての説明をもらい、アリムタ単体の治療を進めて行くが効果が出るかどうかはわからない、これから先はオプジーボも頭に入れての治療を行って行くとのことでした。

第2回目の抗癌剤、アリムタ単体の治療を3月から始めて3回の投与後に効果判定を受けました。残念ながら腫瘍は大きくなってきているとのことで、薬を変えての治療を検討しました。

6月より第3回目のイリノテカン+ジェムザールの抗癌剤治療を始めました。この時点で右肺の腫瘍が腹膜を破り肝臓に転移しているとの診断、ステージ4と言われ余命は10か月と再度の宣告を受けました。この抗癌剤でオプジーボの使える時まで腫瘍の増大を抑えていければとのことでした。

中皮腫のオプジーボでの治療へ

イリノテカン+ジェムザールの8月の第4クールで効果判定、残念な事に腫瘍は大きくなっているとの診断でした。抗癌剤を変えてから3か月で腫瘍を抑えられなくなり抗癌剤治療は終わり、いよいよ免疫治療のオプジーボの治療となりました。この薬が効いてくれると良いのですが、30%の効果率、効く人には劇的に効く、5%の副作用の病気が出る可能性があるとの説明でした。

生きてるだけで丸儲けの気持ちで、オプジーボが効くことを願って気合と根性で暮らそう、この薬が効いてくれるとありがたいです。

先生からがん薬物療法同意書に付いて説明される、悪性中皮腫の進行を抑えるためにオプジーボ(ニボルマブ)治療を行いました。腫瘍の増殖抑制、予期される危険性及び合併症の説明。最後に効果率約30%との説明、何としてでもこの30%に入らなくてはなりません。

9月5日より人生初の免疫治療・オプジーボの治療を始めました。副作用についての説明を受けましたが、危険性・合併症の内容で少し心配になるが、効果を期待しています。

化学療法室において、点滴で約1時間半ほどの治療をし、別段変わったこともなく終了して自宅に帰りました。何も起こらないと思っていたら、Infusion reaction(急性輸液反応)の発熱が38度出てました。病院に連絡し、先生から熱さましで様子を見るようにと言われ薬を飲むとすんなりとおさまりました。

先生からオプジーボの治療は2週間ピッチで行い、効果のある間は続けると説明を受けました。他の疾患で、2年間の投与実績があると説明を受けましたので、何とか2年間は投与されてしぶとく生きて行こうと思います。

9月19日、第2回目のオプジーボ治療。胸部レントゲンの比較でひょっとすると効いているかもと先生から言われました。よく分からないですが、影が少しは小さく?なっているのか。第3回目の治療後に効果判定を行うとのことでした。免疫が腫瘍に重なって大きくなっているように見えて、効果が出ているのに騙されることがあるとの説明を受けました。

先生も決してはっきりとは物を言われませんが、でも効いているかもしれないだけでなんだかうれしくなります。抗癌剤治療で一進一退を繰り返してきて、約1年治療方法もなくなってきている時にオプジーボで光がさし、効果が出てくれれば万々歳だ、何が何でも腫瘍をやっつけて不死身でいなければ、との思いです。

2回目のオプジーボでも発熱をしました。熱が出るのは、薬が効いているということかもしれません。でも、抗癌剤の副作用、あの苦しさと比べると本当に楽です。普段の状態と変わらない生活が今の所できています。お陰様でテニスもゴルフも魚釣もすべて問題なくできています。ありがたい事です。

10月3日、第3回目のオプジーボ治療。前回と同じく胸部レントゲンでの判定、先生も小さくなってきている、効いているかもと、前回と同じ判定を受けました。血液検査で今回は甲状腺の異常が少し出てきているが、CRP・肝臓の数値が良くなってきている、このまま続けましょうと診断され、気分も上々で点滴を受けました。

甲状腺機能障害が出ても、薬を飲めば抑えられるとのこと。それよりも一番悪い奴(腫瘍)を叩くことが最大の課題。今までの実績では、副作用が出ている方が、より薬が効いている可能性が大であるとの話でした。

9月からはじめた免疫治療・オプジーボ。副作用もあまりなく普段の生活が問題なく出来ています。これでしっかりと腫瘍を叩いてくれれば2週間ごとの治療も苦にならなくなって、生活の一部になってくることを願っています。

10月17日に第4回目のオプジーボ治療。このときは胸部CTによる効果判定。8月のCTとの比較、明らかに小さくなっている。先生からは半分にはなっていないが、効果が出ているようですべての部位で小さくなっているようにみられる、少しずつでも小さくなって来れば良いとのことでした。前回から言われている甲状腺の副作用は出ているが、そんなに問題はないとのこと。自分自身でCT画像を比べても確かに小さくなっていました。これは喜ばしいことでした。

中皮腫治療のオプジーボ投与に関連した副作用

オプジーボを投与されて、5回目くらいから2週間おきにオプジーボを入れ続けてきました。その中で起きた副作用ですが、発熱・倦怠感・食欲不振は薬に体が慣れたのかあまり気にならなくなりましたが、投与すると体にぶつぶつと発疹が常に出るようになりました。2週間でひいてはまた投与して出るという状態を未だに繰り返しています。

2019年2月にオプジーボ13回目、主治医より肝臓に浸潤してきた腫瘍が大きくなり問題だと言われ、肺にはオプジーボが効いているが肝臓には効かない、効いていないと言われました。この頃から少し咳が出たり喉が痛くなったりして、呼吸器の検査を受けて喘息が出ているので吸入の薬を処方されました。生まれつき、そんな体質があったのかもしれない、との診断を受けました。

5月になりオプジーボ18回目。肝臓の腫瘍が大きくなってきてこのままでは、肝臓破裂の恐れが出てきたと言われ、肺ではなく肝臓が問題になり少し落ち込みました。治療方法は外科的に手術は無理で放射線科でのRFA(ラジオ波焼灼療法)なら手術できる可能性があるが延命に繋がるかどうかは分からないがとの説明を受けました。チャレンジをする値打ちはありそうなのでこれ以上肝臓の腫瘍が大きくなるならと、放射線科を受診する事にしました。

また、主治医にゲノム検査の事を確認するも、受けるのは患者の権利だが、中皮腫に効果のある治療薬が今のところ無いためにゲノムを調べてもあまり意味がないと言われ断念しました。6月19日にオプジーボ21回目。この日我々を引っ張って下さってた栗田さんが亡くなり、悲しみと絶望感にさいなまれました。

放射線科を受診し、7月8日に手術が決まりRFA手術を受けました。説明では1時間ほどの簡単な手術ですとの事でしたが、始まればカテーテルで肝臓付近の血管の遮断から肝臓の焼灼と4時間以上もかかり、非常に痛い手術で、生まれてから初めて味わった痛みで、麻酔も効かず大声を上げてうめいていたらしいです。結局痛みの為に血圧も上がり、70%ほど取れた時点で手術は中止。ぐったりとして病室に戻るとなんと、右田孝雄さんが励ましに来てくれてました。

非常に痛くて厳しい手術でしたが当初から呼吸器内科でも目標にしていた70%は取れたので、上手く行ったと喜んでいました。先生方は残っている部分を完全に取れるとの事で、1週間後に有無を言わさずに2回目の手術をされ、またしても死ぬほど痛い目に遭いましたが、上手く取れて成功。後でお聞きすると病院始まって以来の大型の腫瘍のRFA治療であったらしく、今後の事は前例がないので問題はないだろうが分からないとの事でした。

肝臓の手術後、いつもどおりにオプジーボ23回目がスタートしましたが、26回目にしてまたしても肝臓の別部位に腫瘍が発見されました。9月に3回目のRFA手術をし、これで肝臓は今のところ問題なしの状態になっています。あとは放射線科の定期検診のみです。

オプジーボを再開して30回目にして肺に影が出てきて肺炎の可能性を指摘されました。恐れていた副作用の間質性肺炎が疑われCT検査、32回目で肺炎の影が多くなってきたのでオプジーボを一旦延期、様子を見るとの事となりましたが、自覚症状は特にありませんでした。

そこから1ヶ月様子を見て、33回目のオプジーボを開始。主治医から喘息を指摘されていましたが、実はオプジーボの副作用の可能性が大であるとの話がありました。オプジーボ投与患者で同じような喘息の症状が出てきた症例が何人か出てきたらしいという話でした。私の場合は生まれつきの体質ではなく、副作用だったのです。

35回目の治療時点で肺の影が無くなり、肺炎の疑いも無くなりホッとしたのもつかの間。2020年2月12日朝、犬の散歩中に突然、脳梗塞を起こして緊急入院となってしまいました。血液検査でも問題もなく、中皮腫のストレスからなのか、原因は分かりませんが頭の右側に梗塞を起こし、言語中枢に異常をきたしたために、オプジーボも中止にして2週間入院治療をしました。何かと色んな事が起こるものですが、処置が早かったので後遺症もなく無事に退院できました。

オプジーボ36回目の再開、この頃からオプジーボの副作用か脳梗塞が原因なのか分かりませんが、食べ物の味がおかしくなる、辛いものの後味が甘く感じるなどの症状が出ました。これについては主治医に原因・対応を現在検討してもらっています。

以後、特段の問題もなく39回目の治療を終えて普段の生活を過ごしておりましたが、何と4月末に2回目の脳梗塞を起こしてまたしても2週間入院、中皮腫の治療どころではなく脳梗塞の治療と予防に専念する日々を過ごしております。

中皮腫(肉腫型)患者として生きる

2017年8月に中皮腫(肉腫型)の確定診断を受け、手術もできず、余命6か月の宣言を受けました。効果が出る確率の低い抗がん剤治療を経て2018年9月から、オプジーボの治療を1年8か月続けております。現在はコロナのせいで自粛しておりますが、普段は体調も良く週に2〜3回テニスをして、ゴルフにも行き、魚釣もして楽しくしぶとく生活をしております。ともすれば自分が末期がんの患者だということを忘れて、主治医の先生に筋肉痛の相談をしたりして笑われております。本庶佑先生のオプジーボのお蔭で自分でもびっくりするほど元気に過ごせております。

これから先、どのような事が起こってくるのかは分かりませんが、願わくばすべての中皮腫患者のための、治療薬がオプジーボに引き続いて早急に開発されることを願っております。39回のオプジーボ治療の時系列をご報告しただけですが、少しでも皆様のご参考になれば幸いです。