中皮腫治療中の食事〜腹膜中皮腫患者である私の経験から

埼玉県入間市 原 修子

化学療法中の副作用で一番つらい物の中に食欲不振や味覚障害を上げられる方も多いと思います。 特に暑くなるこれからの時期は食欲が落ち込みやすくなります。暑い夏を元気に過ごすためにも食欲のない時の対処法を私の経験談を交えながら簡単にまとめたいと思います。

まず食欲不振や味覚障害になる原因には、①薬物による視床下部への刺激などの中毒性のもの。②腸や胃、肝臓などの機能低下のため起こる内臓性のもの。③心理的要因によって味覚障害や嘔吐などが引き起こされる中枢性のものなどが挙げられますが、自分がどの症状に該当するのかを知る必要性があります。

腸や胃などの機能が低下している内臓性の場合は、必要に応じて投薬などの処置をして改善を試みます。また、食べられる時に食べられるものを少しずつ口にするようにし、足りない栄養分などはサプリなどで補うのも良いでしょう。ただし、薬との飲み合わせなどの問題もあるので薬剤師さんとの相談が必要です。

吐き気や嘔吐がある場合は脱水の可能性もあるので、水分やカリウムなどの損失を考慮して補給する必要性があります。味覚障害がある場合は、症状に合わせて自分の好みの味に調整したり、うがいや飴を舐めたりすることでまぎらわすことができます。

私の場合は、主に軽い吐き気と味覚障害の症状がありました。 吐き気がある場合は無理に食べると逆に胃を圧迫してしまうため、無理なく食べられる時に消化の良いお粥やうどんなどを少しずつ口にするようにしていました。また、脱水を防ぐためナトリウムを含んだイオン飲料や経口補水液などを多く飲むよう心掛けました。 味覚障害については常に金属を舐めているような感覚があったので、爽快感のあるミント系の飴やガムなどで気をまぎらせ、食事はさっぱりしたものなら食べやすかったので酢の物などを中心にした食事へと切り替えていきました。

その他、栄養を取りやすく食べやすいものとして汁物や麺類、プリン、フルーツや野菜ジュースなどがありました。汁物も普通のお味噌汁やスープなどは食べにくかったため、じゃが芋や南瓜などをすり潰しポタージュ状にしたり、冷製スープにすることで口に出来るようになりました。また野菜やフルーツを効率的に摂取するため毎朝バナナ、りんご、小松菜などをミキサーで撹拌しスムージーを作って飲むよう心掛けました。スムージーにはデトックス作用があり、体内の毒素を排出させてくれ免疫力をアップする効果もあります。

カロリーだけならアイスクリームやチョコレートなどでも補うことは出来ますが、どうしても食べ物を口に出来ない場合は管理栄養士さんに相談してアドバイスをもらうのも良いかもしれません。 入院中であれば通常の病院食でなく、自分の食べたいものを選択できるアラカルト食への変更なども病院によっては可能です。

また調理中の匂いが気になる場合などは、無理に自分で作るのではなく家族に手伝ってもらったり市販のお惣菜やデリバリーサービスなどを上手に利用することで身体への負担を減らすこともできます。

【まとめ】

○治療の影響によって食欲がない場合

副作用の強い時期を過ぎれば食欲は戻ります。食べにくい時は消化の良いものを食べたいときに少しずつ口にしましょう。

○吐き気や嘔吐がある場合

匂いや味などが原因になることもあるので刺激物や匂いの強 いものは避けると良いでしょう。 冷たいものや口当たりのよいもの、果物などは比較的食べやすいです。また、とろみをつけると口当たりが良くなり匂いも気にならなくなります。

○味覚障害がある場合

味覚障害がある場合、匂いにも敏感になっていることが多いので匂いの強い食べ物は避け常に口の中を清潔にし乾燥を避けましょう。

自分の症状をよく理解した上で、主治医の先生や管理栄養士さんと相談して不足している栄養を補っていくと良いでしょう。 また、『がんよろず相談Q&A 第3集 抗がん剤治療・放射線治療と食事編(第6版)』では、症状別の工夫などが具体的に書かれています。ぜひ参考にしてみてください。

(参考)
稲野利美ほか『がんよろず相談Q&A 第3集 抗がん剤治療・放射線治療と食事編(第6版)』(2016)静岡県立静岡がんセンター「がんの社会学」研究グループ

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