腹膜中皮腫の治療体験:絶望と希望の狭間で余命2年の宣告を生きる

更新日:2020年7月14日

公開日:2019年2月25日

原 修子

目次

二度の絶望、腹膜中皮腫の診断

東日本大震災直後の2011年5月、私は子宮頸がん2b期と診断されました。この時点で腫瘍は若干、骨盤まで浸潤していた為に手術は適用外となり化学療法として中皮腫治療にも使用されているシスプラチンを単体で6クール行いました。

また化学療法と並行しながら放射線治療として外部照射を30回、膣の中に専用の器具を入れ直接、腫瘍を焼く膣内照射を4回、行いました。そしてこの放射線治療の影響により子供の産めない身体となりました。一度目の絶望です。

通常の癌では5年間、再発や転移がなければ完治とされます。子宮頸がん発症から5年を目前にした2016年3月。腹水貯留を認めるようになり子宮頸がん再発の疑いにより腹水採取による病理診断を実施。この時点で異常は認められず経過観察となりましたが5月末より右側卵巣に腫瘍を認めるように なり8月に生検を実施した結果、2016年9月、腹膜中皮腫と診断され平均余命2年と宣告されました。

二度目の絶望です。

腹膜中皮腫の手術は適用外。抗がん剤治療と患者同士の交流

腫瘍は右側卵巣から横隔膜に沿って浸潤しており手術は適用外。
10 月よりシスプラチン+アリムタを3クール実施、3クール目でシスプラチンに よるアレルギー反応が出てしまったため、その後はアリムタ単体 3 クールの合計 6クールの化学療法を行い経過観察となりました。中皮腫と診断され絶望の淵から私を救ってくれたのがブログという世界でした。そこには中皮腫と診断されながら10年以上も闘病生活を送っておられる方もおり、あと2年しか生きられないであろうと思っていた私には嬉しい衝撃であり希望が持てた瞬間です。

私が同病の方と初めて会ったのは2017年6月のことです。以前からブログ内で交流のあった右田さんの呼びかけにより中皮腫患者7名、ご家族6名が集まり【中皮腫・同志の会】を開催しました。当日は治療法や民間療法についてなどの話をし、有意義な時間を過ごすと共に【自分は決して一人ではない。】と思えるきっかけとなりました。患者会に入会したきっかけは2017年8月のジャパンキャンサーフォーラムへの参加です。交流会の席で患者会の皆様と交流を持たせて頂き、ご縁あって9月に入会する運び となりました。患者会に入会してからは病院周りや戸別訪問、講演会などで全国各地へ行かせて いただくようになりました。

このような活動を通して私が強く感じたのはアスベスト問題があまりにも周知されていないという事です。これから先、患者数は減るどころか増加傾向になります。そうなった時、私たちに何ができるでしょうか?
何が求められるでしょうか?

腹膜中皮腫の再発と抗がん剤の副作用

2018年11月。腹膜中皮腫再発。11月下旬よりカルボプラチン+アリムタの化学療法を6クール行う予定となり現在3クールが終了しました。

副作用としては 1 回目の抗がん剤投与後に排便ショックを起こし血圧、体温の低下に伴い気を失う事などもありましたが、現在は軽い倦怠感と食欲低下。そして一番つらいのがカルボプラチンの副作用ではあまり見られないという下痢に日々、悩まされています。

食事は基本、消化に良いものを摂取するようにしていますが【食べられる時に食べたい物を】をモットーにしています。また下痢については、医師からビオスリーとロペラミドを処方してもらい対処しています。

前回のCTの画像では肝臓の肥大、血液検査でも肝臓の数値の悪化が指摘されているので今後の検査によっては治療法なども変更になるかもしれません。

今、私は3度目の絶望の中にいます。これから辛い治療生活の再開です。 講演会で私が毎回、口にする言葉があります。 【辛い】という字に【一】を足すと【幸せ】という文字になる。だから辛い時こそ自分に出来る何かをして欲しい... 今、私が出来ることは患者として声を上げることです。この声を絶やすことのないよう声を上げ続けたいと思います。

胸膜中皮腫でのオプジーボ承認と腹膜中皮腫

2018年8月に悪性胸膜中皮腫に対するセカンドラインの治療法として承認されました。少なからずオプジーボによる治療に期待を抱いていました。 しかし医師から告げられた言葉は「厚生労働省が認可してい ない薬の投与はできません。」との回答でした。それでも引き下がらず理由を聞くと「腹膜中皮腫の患者に対するエビデンスがないから。」と言われました。最終的には「どうしてもオプジーボやキイトルーダのような分子標的薬を使いたければ全額実費になります。」と言われました。

腹膜中皮腫というだけで望む治療すら受ける事の出来ない疎外感...孤独感...
怒りすら込み上げる複雑な心境...。医療格差とは、このような事を指すのだと実感した出来事でした。

腹膜中皮腫患者としてがん遺伝子パネル検査を検討

2019年6月、【がん遺伝子パネル検査】が保険適用となりました。私の通う大学病院においても2019年10月より保険適用された事もあり、遺伝子パネル検査に触れる機会がありました。

まず、検査をするにあたり、がんゲノム外来を受診し検査説明を受けました。この際、祖父母や親戚に至るまでの家族構成、及び病歴の聞き取り調査がありました。これらは生まれながらの病的変異が見つかった場合の対応に準ずるもので す。また、検査に提出する為の検体は採取してから三年未満のものが良いとの説明がありましたが、この時点で私が生検を実施してから三年半の月日が経過しており病理担当の先生に検査が可能かどうか確認してから同意書へサインをしまし た。通常、検査結果がわかるまでに約6週間前後と言われていますが私の結果が出たのは3週間後でした。しかし、検査は一時中止となりました。

検体からDNAを抽出できなかったために検査が一時中止となってしまったのです。検査を続けるにはもう一度、生検をして検体を採取する必要があります。 主治医と相談した結果、新たに生検をしたとしてもDNAが抽出できるかも分からず、身体にかかる負担なども考慮した結果、残念ながら検査を中止することになりました。