中皮腫とアスベスト労災補償認定
更新日 : 2021年2月10日
公開日:2019年1月1日
このページは、
・中皮腫と労災がどう関係あるの?
・認められる資格(可能性)はあるの?
・労災のメリットは?デメリットはないの?
・労災って手続き面倒ではないの?
・何からはじめたら良いかわからない。
・誰に相談したら良いのかわからない。
こんな疑問について、年間数百件の相談に応じている経験および、弁護士等の法律専門家からも関心が向けられる認定支援を重ねてきた実績・ノウハウから解説します。
・石綿救済制度で認定されている方。
・会社が無くなっている方。
・会社が労災をかけていなかった方。
・一人親方で仕事をしてきた方。
・アスベストを吸った記憶が全くない方。
そう思っている方もぜひ一読ください。
目次
中皮腫と石綿労災補償認定【すべての患者さんに認定される可能性がある】
中皮腫をはじめとする、肺がんや石綿肺などの石綿(アスベスト)疾病に罹患された全ての患者さんに認定される可能性があります。特に中皮腫は、基本的にアスベスト以外の原因はないとされています。
労災保険制度は国(厚生労働省)が管理・運営をしている公的制度で、石綿救済制度よりも給付内容が手厚くなっています。
中皮腫と石綿労災補償認定【請求する権利】
中皮腫患者さん(遺族含む)は労災認定の可能性がありますが、労災請求には「請求権(受給資格)」があります。まずは、ご自身が該当するか確認してください。以下のいずれか一つに該当していれば基本的に請求権があります。
・中皮腫で治療・療養している。
・家族(妻、夫、両親等)が中皮腫で亡くなった。
ただし、請求には時効があったり、遺族の方については家族構成・生活状況によって受給資格者順位が定められていますので、詳しくは中皮腫とアスベスト労災補償認定【請求権・受給資格者・時効編】をご一読ください。
また、一人親方の方でも一時的に労働者と判断される時期があれば請求が検討できます。「自分は自営業者で労働者ではない」と思われている方の中にも、実態は労働者である方もいます。詳しくは、中皮腫・アスベスト(石綿)疾患の労災補償認定と労働者性をご確認ください。
中皮腫と石綿労災補償認定【認定される基準】
労災制度には、「認定基準」があります。中皮腫の場合は次のいずれかの基準に該当するか確認してください。多くの方は前者に合致して請求されます。
・労働者として1年以上、アスベストに関わる仕事をしていた。
・「石綿肺」を合併している。
「該当しない。ダメだ」と思われた方。安心してください。認定の可能性があります。詳しくは、中皮腫とアスベスト労災補償認定【認定基準編】をご確認ください。
中皮腫と石綿労災補償認定【救済制度よりも厚みのある給付内容】
労災認定されると給付をいくつかの受給を受けることができます。基本的な給付は次のとおりです。療養中の方の場合は、労災認定されれば救済制度で給付されるよりも100%経済的環境が改善します。時間軸が長期になるほど、その差は数十万円〜数百万円になります。
・療養補償給付(医療費の自己負担分等)
・移送費(病院等への公共交通機関やタクシー、新幹線・飛行機の交通費等)
・休業補償給付(病気のために仕事ができなかった日単位で支給。理論的には100歳でも受給可能)
遺族の方には次の給付があります。実質的に遺族関係の給付は救済制度にはありません。遺族の方で労災認定される方とそうでない方の場合の差は、多くの場合、一千万円〜二千万円以上になります。
・遺族補償年金ないし遺族一時金
・遺族特別支給金
・葬祭料
給付について詳しく確認されたい方は、中皮腫とアスベスト労災補償認定【給付編】をご確認ください。
中皮腫と石綿労災補償認定【請求から決定の流れ】
ざっと、請求から認定までの流れをまとめると次のような流れになります。請求には期限がありますので気をつけてください。
労災請求から認定までの流れ
①対象疾病と「認定基準」・請求権の確認。 ⬇︎ ②給付内容を確認。 ※基準を満たしていない場合や不明な場合も請求を断念する必要はありません。 ⬇︎ ③労働基準監督署に労災請求。 ⬇︎ ④労災認定(不認定)の通知を受ける。
中皮腫とアスベスト労災補償認定【何からはじめたら良いかわからない方へ】
ここまで労災制度と概要についてはおおよそをつかめて頂いたかと思います。では、何からすればよいかと言えば、労働基準監督署に労災請求書類を提出することによって、調査が進められいきます。最寄りの労働基準監督署で書類をもらうこともできますし、請求書類は厚生労働省のサイトからダウンロードもできますので記載したのを提出する形でも構いません。
【参考資料】
・厚生労働省 石綿による疾病の労災認定 ・厚生労働省 労働災害が発生したとき ・厚生労働省 「石綿にさらされる作業に従事していたのでは?」と心配されている方へ ・独立行政法人環境再生保全機構 労災保険給付(労災保険制度)
この記事の執筆者
事務局 澤田慎一郎
大学在学中からアスベスト被災者・家族と交流。千葉大学人文社会科学研究科(博士前期課程、公共哲学専攻)修士課程終了。大学卒業後、労働組合においてアスベスト被害を含む労災支援活動に従事。現在、全国労働安全衛生センター事務局次長、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会全国事務局。元劇団員俳優の労災認定やアスベスト肺がん逆転認定、ゴム手袋タルク石綿労災、バス運転手中皮腫労災の支援など弁護士等の専門家から注目される実績多数。