中皮腫とアスベスト労災補償認定【請求権・受給資格者・時効編】
公開日 : 2021年2月1日
中皮腫とアスベスト労災補償認定のページでは、中皮腫と労災制度の全体像についての概略を説明しています。
このページでは、
・自分には労災の請求する権利があるの?
・いつまでに請求をしないといけないの?
・家族が中皮腫などのアスベスト疾患で何十年も前に亡くなっているけど請求できるの?
こんな疑問について、年間数百件の相談に応じている経験および、弁護士等の法律専門家からも関心が向けられる認定支援を重ねてきた実績・ノウハウから解説します。

目次
中皮腫とアスベスト労災補償認定【請求権とは】
中皮腫になったからといって、医療機関を受診すれば、医療機関から労災保険制度の管理・運営をしている厚生労働省に連絡が行って自動的に給付が開始されるものではありません。全ては、被災された患者さんやご遺族の請求がされることによって審査・決定がされます。これら全ての方に「請求権」があります。
中皮腫とアスベスト労災補償認定【各給付と請求権の時効】
一口に「請求権」と言っても、労災保険制度にはいくつかの給付があり、それぞれに「時効」があります。労災認定されてから生じるものではありませんので、ご注意ください。主な給付の時効は次のとおりです。
療養補償給付
基本的には時効はありませんが、薬局や労災指定医療機関以外で生じた費用については、支払いの費用が発生した翌日から2年で時効となります。協会けんぽなど、先行して労災保険以外を利用していた場合は返還の請求を受けてから2年で時効となります。
休業補償給付、休業特別支給金
休業(病気のために仕事ができなくなった状態で、賃金等を受けていない状態)の必要が生じた翌日から2年で時効となります。日単位で請求権と時効が発生します。
移送費
通院等をした際に要した費用が生じた翌日から2年で時効となります。日単位で請求権と時効が発生します。
遺族補償年金、遺族補償一時金、遺族特別支給金
中皮腫被災された患者の方の死亡の翌日から5年で時効となります。
葬祭料
被災された患者の方の死亡の翌日から2年で時効となります。
中皮腫とアスベスト労災補償認定【請求権時効の具体的例】
例えば、2019年2月1日に、調子が悪く近所の呼吸器内科を受診し、CT画像などで異常を指摘されて中皮腫の経験が豊富な別の病院を紹介されて3日後の2月4日に受診して、のちに中皮腫の診断が確定した場合は2019年2月2日が時効起算点となり、下記のような請求期限となります。
・2021年2月1日までが、2019日2月1日分の休業補償と通院交通費の請求期限
・2021年2月3日までが、2019年2月3日分の休業補償の請求期限
・2021年2月5日までが、2019年2月5日の休業補償と通院交通費の請求期限
ご遺族の場合は、例えば2019年2月1日に患者さんがお亡くなりになった場合は次の請求期限となります。
・2021年2月1日までが、2019日2月1日にお亡くなりになった患者さんに関わる葬祭料の請求期限
・2024年2月1日までが、2019日2月1日にお亡くなりになった患者さんに関わる遺族年金ないしは遺族一時金の請求期限
中皮腫とアスベスト労災補償認定【各給付の受給資格者】
中皮腫などで療養されている方は、休業補償給付や移送費の請求について時効に気をつけて頂ければ問題ないのですが、ご遺族の方は「受給資格者」であるかどうかよく確認をしてください。
遺族年金受給資格者がいない場合は
遺族一時金受給資格者を確認してください。
全ての遺族(遺族でない場合も含む)が対象となる
中皮腫とアスベスト労災補償認定【遺族に関わる請求権は特に注意】
過去に支援した中には、重婚的内縁関係であったり、被災者死亡後に婚外子の存在が明らかになったケース、母親と離婚していた父親の死亡に伴い遺族給付の権利があると思っていたものの父が実姉と同居していたケースなどがありました。
特に遺族年金については、「被災労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた」という条件がついてきます。
この点を少し詳しく言うと、
被災した労働者(アスベスト被害者)が亡くなった当時において、その収入によって日常の消費生活の全部又は一部を営んでおり、死亡労働者の収入がなければ通常の生活水準を維持することが困難となるような関係(生計維持関係)が状態であったか否かが受給資格有無の判断となります。
社会保険審査会の過去の裁決(昭和35年7月30日)では、「被災労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた」という点について次のような判断をしています。
「被保険者の収入がなければ社会通念上普通の生活水準を維持することができない関係にある場合に成立する」
中皮腫とアスベスト労災補償認定【患者死亡から5年以上経過してしまった遺族の方】
労災保険制度では、被災者の死亡の翌日から5年が経過してしまうと、遺族補償給付の請求権が時効となってしまいます。
このような遺族を救済するために石綿健康被害救済法では、「時効救済制度」を設けて請求を可能としています。要件は以下をご確認ください。
【参考資料】
・厚生労働省 石綿による疾病の労災認定 ・厚生労働省 労働災害が発生したとき ・厚生労働省 「石綿にさらされる作業に従事していたのでは?」と心配されている方へ ・独立行政法人環境再生保全機構 労災保険給付(労災保険制度)
この記事の執筆者
事務局 澤田慎一郎
大学在学中からアスベスト被災者・家族と交流。千葉大学人文社会科学研究科(博士前期課程、公共哲学専攻)修士課程終了。大学卒業後、労働組合においてアスベスト被害を含む労災支援活動に従事。現在、全国労働安全衛生センター事務局次長、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会全国事務局。元劇団員俳優の労災認定やアスベスト肺がん逆転認定、ゴム手袋タルク石綿労災、バス運転手中皮腫労災の支援など弁護士等の専門家から注目される実績多数。