保温工(建設業)の中皮腫・アスベスト労災認定事例:北海道・札幌

更新日 : 2020年4月14日

公開日:2019年6月4日

保温工・ブロック工としてアスベストばく露

札幌市内にお住いで、60代半ばの夫が胸膜中皮腫で療養しているということで、妻のAさんからご相談がありました。仕事の内容を伺うと、ブロック工や保温工として建築現場で仕事をされており、作業中には鉄骨等に石綿を吹き付ける作業の周辺で仕事をされていました。雇用されていた会社は廃業していましたが、年金や雇用保険の記録もあり、結果的に労災認定が困難な事例ではありませんでした。

Aさんの夫の発病から請求までの経過を振り返ると、中皮腫患者さんや家族の皆さんが置かれている環境の一端をかいまみることができます。

悪性胸膜中皮腫の発症と労災請求

Aさんの夫が胸の痛みなどで近所の病院を受診したのは2017年12月。のち、確定診断までにいくつかの病院を受診して、結果的に確定診断に至ったのが2018年の4月に入ってからでした。ご相談を受けたのは2018年8月下旬だったのですが、その時点では患者様の容態もかなり悪くなっていました。

その少し前の6月中旬に、Aさんは労働基準監督署に相談の電話をされていました。開示請求で取得した調査結果復命書に添付された記録には、そのときの記録が残されています。それによると、Aさんは労働基準監督署に電話を入れるまで、保健所などに4ヶ所に問い合わせを入れて、4ヶ所目で「仕事が原因なら労災」との説明を受けたことで労働基準監督署に電話をしたという経緯でした。

中皮腫の診断を受け落ち着かない中で

労働基準監督署の電話担当者に、Aさんは「診断後、精神的ショックや、入院の対応など、夫も私も疲れている。(本日)労災の手続きについて説明を受けたが、請求書だの年金記録だの雇用保険記録だの、請求意思を断念させるために手続きを面倒にしているように思える」と話したと記録されています。記録を見る限り、担当者がAさんが言うような「断念させる」ような意思を持っていたかの真意はわかりません。ただ、担当者が一定の説明をしても、精神的な負担も含めて大変な状況にあるなかにあっては患者さんやご家族の肩が労災などの社会保障制度の仕組みを十分な整理ができないことは珍しくありません。

アスベスト労災請求後の迅速な調査

結果的にAさんは、8月下旬にご相談に来られるまで労災請求をせずにいました。ご相談を受けたのは土曜日でしたので、週明け月曜日に請求に行くことを促し、患者様の容態も悪いということで本職からも労働基準監督署に連絡を入れて早急に聴取をして頂くようにお願いしました。結果的に1週間後に聴取して頂き、請求から2ヶ月半もかからずに労災決定がされました。残念ながらその直後に患者様はご他界されましたが、その前に労災認定されたことはAさんを含めて残されるご家族に対する心配をほんの少しやわらげられたのではないかと思っています。

中皮腫という聞きなれない、また必ずしも十分に情報があるとは言えない病気の治療方針やそれに伴う生活設計の見直しを考えていくだけでも大変ななか、Aさんのように労災等の給付の問題に向き合うのが困難な状況になってしまうのは決して珍しい話ではありません。

最近も別の相談者の方から何度も、「これはどうなのか。あれはどうなのか」と何度も質問をされることがあります。そのように何度も問いかけて頂き、わからないことを一つひとつご説明し、不安をなくすお手伝いをすることも私たちの取り組みの一つです。どんな些細な点でも結構ですので、まずはご相談ください。