全国建設アスベスト(石綿)訴訟で最高裁が国の賠償責任を初めて確定

公開日:2020年12月16日

建設現場などでアスベスト(石綿)にばく露し、中皮腫や肺がんなどの健康被害を受けた被害者やその遺族が、国とアスベスト建材の製造メーカーに対して賠償を求めていた裁判(東京地裁)の上告審において、12月14日付けで最高裁は国の上告を退ける決定を出しました。

この裁判では、2審の東京高裁の判決(2018年3月)で、約330人の原告に対して約22億8000万円の賠償が命じられています。したがって、この賠償命令が確定したことになります。この訴訟も含めて、全国で9つの地方裁判所に1000人以上が国と建材メーカーに賠償を求める裁判を起こしています。

これまでの経過については、建設アスベスト(石綿)訴訟裁判の動向 中皮腫・アスベスト疾患被災者の補償・救済の賠償(給付)の到達点をご確認ください。

目次

建材メーカーの責任が確定するのは今後

しかし、建設アスベスト訴訟における全ての方向性が確定したわけではありません。建材メーカー各社の責任は、各地判決で判断が分かれており、最高裁は今回の訴訟においてもメーカー責任に関しては2021年2月25日に弁論を開くこととしています。

建設アスベスト訴訟の全容はみえていません

訴訟参加にあたって注意すべきこと

建設アスベスト訴訟を含めて、各種アスベスト訴訟に取り組んできた弁護団がいる一方で、他人の長年の苦労の成果の上澄みだけをすくい取ろうとする弁護士や弁護士事務所も多くあります。電話で実績を聞いてみられるのが良いでしょう。「アスベスト訴訟で最高裁で判決を取ったことはありますか」と。どれだけの判決を取ってきたのかが、弁護士や弁護団の力量を推し量る要素でもあります。

建設アスベスト訴訟において、建材メーカーの責任がどのように確定していくのか、確定してもなお個々の被害に対して弁護士や弁護団に責任立証の経験やノウハウが大切になってきます。アスベスト(石綿)肺がん・中皮腫などの裁判等の賠償・補償・給付の相談と検討なども参考にしてください。

中皮腫が治る病気になったわけではない

今回の最高裁の決定は、中皮腫を含むアスベスト被害者の救済を前進させる一歩であることは間違いなく、歓迎すべきことです。提訴された全ての原告の方のこれまでのご苦労は想像を絶するものがあったと思います。弁護団・支援者のみなさまのご尽力にも敬意を表します。

一方で、建設アスベスト訴訟で、全ての中皮腫やアスベスト疾患被災者が救済されるわけでもありませんし、賠償が認められた患者さんの病気が治るわけでもありません。

設立当初からのキャラバン隊の理念をもとに、ピアサポート活動をこれまで以上に展開し、給付の格差を是正し、中皮腫を根治させるための治療法の確立を目指して、医療従事者をはじめとする関係者と連携して今後も活動を進めていかなければなりません。

参考

毎日新聞(2020年12月16日)建設アスベスト訴訟、国の賠償責任初確定 最高裁

大阪アスベスト弁護団 <速報>【建設アスベスト訴訟】最高裁で国の責任確定、一人親方も救済!