中皮腫治療におけるオプジーボの効果と副作用
執筆者:すいか
免疫チェックポイント阻害剤ニボルマブ(商品名オプジーボ)の奏功率は3割と言われていますが、私の場合、胸膜の中皮腫には効果がなかったものの、転移した腫瘍には縮小がみられた幸運なケースでした。一方で、その副作用に苦しんだのも事実であり、これまでの経緯を振り返ってみたいと思います。
目次
オプジーボ使用前の胸膜中皮腫の治療歴とオプジーボの投与
悪性胸膜中皮腫の疑いにより2017年4月に胸膜生検を受け、その手術からの播種が翌年3月に判明しました。播種は生検を受けた病院ではなく転院先で指摘され、2018年4月に放射線治療、5月からはアリムタとカルボプラチンの投与を開始しました。しかし転移した腫瘍は大きくなり、触れてわかる膨らみが右肋骨の外側に生じ、腕も持ち上げられないくらいの疼痛に襲われるようになり抗がん剤は6回で打ち切られました。
その後2018年11月からオプジーボの投与を開始しました。当初は抗がん剤のような(吐き気や目眩、便秘などの)副作用もなく、5回の投与で腫瘍の縮小が確認できたので継続することとなりました。ところがやがて体調不良となり投与は13回目をもって中断しました。
胸膜中皮腫におけるオプジーボ使用後に出てきた諸症状
10回目あたりから皮膚粘膜にヒリヒリ感や、口の周りがガサガサと荒れたり、腕や足に小さな発赤が出ては消えたり、それ以上悪くなることはないものの副作用かと思える症状が出始めました。また、思い当たることもないのに胃痛・腹痛・下痢・嘔吐に襲われ、緑色の胆汁を吐いて驚いたこともありました。
さらに全身の怠さも強くなり、脚は異様に重く、気力もなくなり一日中寝込むようになってしまい、食欲もなく、家族が心配して病院に付き添い、そのまま1週間入院しました。食欲が回復したのは3ヶ月後でしたが、体重は7kg減り元の体重にはまだ戻りません。
同じく手・肘・肩の関節痛と、手の強張りやバネ指が生じ、リウマチ検査もしましたがリウマチではなく副作用らしいと分かるまでに半年かかりました。その間、鎮痛剤と貼り薬が処方されるだけで、関節の痛みは消えず、ついに左肩に激痛が生じMRIで調べると腱板損傷を起こしたことが判りました。痛みに耐えかねて鍼灸院で4回鍼治療を受け、手指の関節痛とバネ指は多少の改善がみられましたが、肩の痛みは解消しません。肩専門の整形外科で左肩に注射をしても強い痛みがとれず、特に夜間痛や生活の不自由さは予想もしていなかったのでショックを受けています。腱板損傷が副作用によるものではなく、加齢が原因だとしても、関節痛に引き続いてのことだったので防げなかったものかと腑に落ちない思いです。
そして歯肉炎も長引きました。初発の歯肉炎がゴールデンウィーク中だったので市販薬でしのぎ、その後医師から出された薬で治ったかに見えてはぶり返し、延々と半年以上、出血や腫れ、治らない口内の傷、時には炎症を起こして抗生剤を服用するなど、なかなか症状が消えませんでした。近所の歯科医にもかかりましたがオプジーボの副作用とは受け止められずいろいろ薬を試しては、もう大学病院を紹介するからそっちへ行くようにと言われてしまいました。それを先延ばしにしているうちにやっと半年ほどして歯肉炎も治ってきました。
中皮腫治療におけるオプジーボの副作用情報の収集と周知対策
オプジーボの副作用は多岐に渡り、重篤なもの以外はデータや情報がほとんど医師の元に届いておらず、副作用への対処の仕方はみんな手探り状態のようです。血液検査でのチェックも数値に現れないような症状は、患者がいくら訴えてもそれが副作用なのか、新たな病変なのか、医師も決めかねているのが現状です。オプジーボが新しい治療薬ゆえの情報不足が原因ではないでしょうか。
私は3週間ごとに胸水を抜いているのですが、胸水から中皮腫細胞が検出され続けていますので、残念ながらオプジーボが奏功しているとは言えません。しかし転移した腫瘍は見事に消えたのです。そのことは声を大にして感謝せねばなりません。それだけにオプジーボの副作用を恐れるあまり、その素晴らしい効力まで否定されてはなりません。
オプジーボの副作用はどんな小さな症状であっても、様々な側面からのデータがもっと必要です。患者も医師も副作用に手を焼いているケースは多く、その点をもっと製薬会社が情報の収集と広報に対策を講じていただきたいと切に希望しています。