胸膜中皮腫に新たな治療の選択肢~MSD製薬「抗PD-1抗体/抗悪性腫瘍剤「キイトルーダ®」切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫に対する化学療法との併用で承認を申請

7月1日、MSD製薬が抗PD-1抗体/抗悪性腫瘍剤「キイトルーダ®」切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫に対する化学療法との併用で承認を申請しました。

胸膜中皮腫については、シスプラチン+ペメトレキセド(アリムタ)の抗がん剤2剤併用療法、イピリムマブ(ヤーボイ)+ニボルマブ(オプジーボ)の免疫チェックポイント2剤併用療法、ニボルマブ単剤療法が、胸膜中皮腫以外の腹膜・心膜・精巣鞘膜中皮腫については、ニボルマブ単剤療法が保険承認された標準療法とされています。組織型や段階、状態に応じて、治療薬、治療法が選択され、難しい中皮腫治療に立ち向かっています。

こうした非常に限られた治療選択肢しかない中皮腫治療にとって、あらたな標準療法として、今回、既存の標準療法であるシスプラチン+ペメトレキセドの抗がん剤2剤併用療法に、免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-1抗体薬「キートルーダ」を上乗せしたところの3剤併用療法の承認申請をおこなったことをキートルーダの製造会社であるMSD製薬が発表しました。

抗PD-1抗体/抗悪性腫瘍剤「キイトルーダ®」切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫に対する化学療法との併用で承認を申請(MSD製薬 2024年7月1日リリース)

リリースは「今回の製造販売承認事項一部変更承認申請は、海外の多施設共同非盲検無作為化第Ⅱ/Ⅲ相試験であるKEYNOTE-483試験および国内の単群多施設共同非盲検非無作為化第Ⅰb相試験であるKEYNOTE-A17試験のデータに基づいています。」と述べています。

海外の国際治験であるKEYNOTE-483試験の結果については、次のリンクが参照できます。
KEYTRUDA®(ペムブロリズマブ)、進行悪性胸膜中皮腫の一次治療において 化学療法との併用療法群が化学療法単独群と比較して全生存期間を有意に改善(MSD製薬 2023年3月31日リリース)
未治療の進行胸膜中皮腫に対するペメトレキセド+シスプラチン/カルボプラチンへのキイトルーダの上乗せ、全生存期間を有意に改善 The Lancetより(オンコロ 2023年11月30日)
このオンコロの記事によると、既存のシスプラチン+ペメトレキセド2剤併用療法に比較して、全生存期間などが有意に改善した、(その一方で)有害事象(いわゆる副反応)については「グレード3もしくは4の有害事象(AE)発症率は、キイトルーダ併用群の27%(60/222人)に対して化学療法単独群で15%(32/211人)を示した。グレード5の有害事象(AE)はキイトルーダ併用群で2人、化学療法単独群で1人確認された。」とあり、重篤な副反応は2倍程度になるということです。

MSD製薬のリリースには「国内治験のKEYNOTE-A17試験のデータ」にも基づいた承認申請だ、とありますので、上記海外治験の結果を確認する結果となったとみられるところです。

今回の承認申請は中皮腫治療に新たな選択肢をもたらすものと考えられますので、関係者、関係団体と連携して早期承認にむけて厚生労働省への要請を行っていきたいと考えています。

今月の中皮腫啓発月間での各セミナーにおけるホットな話題の一つになるでしょう。

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