公開日:2020年8月28日
更新日:2025年1月14日
目次
はじめに
中皮腫患者さんの多くが障害年金を、「私はがんだけど障害者じゃないから」「まだ年金をもらう年じゃないから」などと自分には関係ない事ととらえていますが、実はそうではありません。中皮腫患者さんの中には障害年金を受給されている方はいます。ここでは障害年金の概要や請求の流れ、中皮腫患者さんの請求のポイントや、実際に障害年金を受給されている中皮腫患者さんを紹介していきましょう。
中皮腫の場合、確定診断が出た時には病気がかなり進行している方も多く、仕事を辞めざるを得ない方もいます。老齢年金と異なりあまり知られていない障害年金ですが、けがや病気の障害で困っている方の生活を安定させる重要な社会保障制度の一つです。安心した療養生活を送るためにも積極的に障害年金を利用しましょう。
また、働きながら受給することもできるので、例えば体調を考慮して長時間働けない方や力作業が難しい方でも、生活費を年金で補うことができ、安心して療養生活を送ることが出来ます。
最近は若年時に中皮腫を発症する方も多く、障害年金は若年時にも受給できるのでご自分が対象と思われる方はぜひ利用しましょう。
中皮腫はとても稀ながんであるため、障害年金の請求は難しく、ご自身で請求されて途中で諦めてしまう方もいます。また、中皮腫サポートキャラバン隊は障害年金請求のプロではありません。そこで経験豊富な社会保険労務士に依頼することがベストです。
ご自身で中皮腫の障害年金請求に経験と実績のある社会保険労務士を探すことが難しい場合は、中皮腫サポートキャラバン隊にご相談ください。
~以下が中皮腫の障害年金についての解説になります~
中皮腫の障害等級
中皮腫の場合、胸膜・腹膜・心膜・精巣漿膜の全てが悪性新生物(がん)での障害年金請求になりますが、胸膜中皮腫は呼吸器疾患の対象にもなります。個人の障害の状態によって、悪性新生物か呼吸器疾患で請求するかが変わってきます。
■悪性新生物による障害の状態については、次のとおりです。
障害の程度 | 障 害 の 状 態 |
1級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を 加えることを必要とする程度のもの |
3級 | 身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を 加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
■呼吸器疾患による障害の状態については、次のとおりです。
障害の程度 | 障 害 の 状 態 |
1級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生 活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状 が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生 活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を 加えることを必要とする程度のもの |
3級 | 身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
障害年金の請求要件
障害年金の請求には3つの要件があります。
①初診日(病気やケガで初めて診療を受けた日)に、国民年金または厚生年金保険に加入していること。障害年金は初診日から1年6ヶ月後が障害認定日となります。
②障害認定日に、一定の障害状態にあること(障害等級1級~3級のいずれかに該当)
③初診日までの一定期間に保険料を納付していること
※障害認定日とは、障害の原因となった病気やけがの初診日から1年6ヶ月を過ぎた日のことです。基本は障害認定日での請求になりますが、請求時には障害認定日より3カ月以内の現症の医師の診断書が必須になります。
※初診日がすぐに分からない場合や障害年金を請求しようと思ったときが、すでに本来の障害認定日を3ヶ月を超えてしまっていた場合なども個別事情に応じて請求できます。
以上の3つの要件を全て満たしていることが必要です。
障害年金は働きながら受給することが出来ます
障害厚生年金3級は「労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの」と定めており、働きながら障害年金を受給できることを表しています。実際にフルタイムで働きながら障害年金を受給されている中皮腫患者さんもいます。
障害年金とは
障害年金は、病気やケガによって日常生活や仕事が制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受給することができる年金です。
障害年金には「障害基礎年金」「障害厚生年金」があり、病気やケガで初めて医師の診療を受けたときに国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」が請求できます。
なお、障害厚生年金に該当する状態よりも軽い障害が残ったときは、障害手当金(一時金)を受給することができる制度もあります。
また、障害年金を受給するには、年金の納付状況などの条件が設けられています。
障害年金の種類と年金額
■障害基礎年金
障害や病気になって初めて診察を受けた時(初診日)に、国民年金に加入していた方が受給できる障害年金です。障害の度合いに応じて、1級と2級が該当します。
年金額には毎年わずかな変動はありますが以下の金額です。(令和6年4月分から)
■1級の場合の年金額
【昭和31年4月2日以後生まれの方】1,020,000円+子の加算額※
【昭和31年4月1日以前生まれの方】1,017,125円+ 子の加算額※
■2級の場合の年金額
【昭和31年4月2日以後生まれの方】816,000円 + 子の加算額※
【昭和31年4月1日以前生まれの方】813,700円 + 子の加算額※
※子の加算額とは、その方に生計を維持されている子がいるときに加算され、第1子・第2子には一人につき234,800円、第3子以降は一人につき78,300円。このときの子供とは、18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子、もしくは20歳未満で障害等級1級または2級の障害者に限ります。
■障害厚生年金
障害や病気になって初めて診察を受けた時(初診日)に、厚生年金保険に加入していた方が受給できる障害年金です。障害基礎年金に上乗せするものとして給付されます。
障害の度合いに応じて、1~3級に該当します。なお、障害厚生年金を受けるよりも軽い障害の場合には、一時金である障害手当金が支給されます。
■1級の場合の年金額
報酬比例の年金額 ×1.25 + 配偶者の加給年金額(234,800円)
■2級の場合の年金額
報酬比例の年金額 + 配偶者の加給年金額(234,800円)
■3級の場合の年金額
報酬比例の年金額 もしくは、最低保証額
■最低保証額:令和6年現在
【昭和31年4月2日以後生まれの方】612,000 円
【昭和31年4月1日以前生まれの方】610,300 円
■報酬比例の年金額の計算式
報酬比例部分の年金額は、1の式によって算出した額となります。なお、1の式によって算出した額が2の式によって算出した額を下回る場合には、2の式によって算出した額が報酬比例部分の年金額になります。
1 報酬比例部分の年金額①+②
①平成15年3月以前の加入期間
② 平成15年4月以降の加入期間
2 報酬比例部分の年金額(従前額保障)①+②
(従前額保障とは、平成6年の水準で標準報酬を再評価し、年金額を計算したものです。)
① 平成15年3月以前の加入期間
② 平成15年4月以降の加入期間
画像引用: 日本年金機構ホームページ
障害の種類
障害は病名に関係なく、法律で定められた「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」に基づいて以下の様に細かく対象と基準が分類されています。
■外部疾患
眼、聴覚、鼻腔機能、平均機能、そしゃく・嚥下機能、音声・言語機能、肢体(上肢・下肢・体幹・脊椎・肢体機能)
■精神疾患
■内部疾患
神経系統の障害、呼吸器疾患、心疾患、腎疾患、肝疾患、血液・造血器疾患、代謝疾患、悪性新生物(がん)、高血圧症、その他の疾患、重複障害
障害等級1級~3級の定義は次のようになっており、これを呼吸器疾患と悪性新生物(がん)に当てはめた定義が冒頭に示した中皮腫の障害等級と言うことになります。
障害の程度 | 障 害 の 状 態 |
1級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものとする。この日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度とは、他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができない程度のものである。 例えば、身のまわりのことはかろうじてできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね就床室内に限られるものである。 |
2級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制 限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。この日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度とは、必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のものである。 例えば、家庭内の極めて温和な活動(軽食作り、下着程度の洗濯等)はできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね病棟内に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね家屋内に限られるものである。 |
3級 | 労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度 のものとする。 また、「傷病が治らないもの」にあっては、労働が制限を受けるか又は労働に制限 を加えることを必要とする程度のものとする。(「傷病が治らないもの」については、 第3の第1章に定める障害手当金に該当する程度の障害の状態がある場合であっても3級に該当する。) |
障害年金請求の流れ
■障害基礎年金
年金請求書を取りに行く
・住所地の市区町村役場、またはお近くの年金事務所または街角の年金相談センターの窓口 に備え付けてあります。
↓
医師に診断書を依頼する(所定の様式あり)
・医師の診断書(障害認定日より3カ月以内の現症のもの。併せてレントゲンや心電図のコピーが必要な場合もあります)。
↓
必要な書類等を集める
・年金請求書、年金手帳などの基礎年金番号を明らかにすることができる書類(加入期間を確認)
・戸籍謄本、戸籍抄本、戸籍の記載事項証明書、住民票、住民票の記載事項証明書のいずれか(請求者の生年月日を確認できる書類)
※単身者の方で、日本年金機構にマイナンバーが登録されている方は、上記の戸籍謄本等の添付が原則不要となります。マイナンバーが登録されていない方は、年金請求書にマイナンバーを記入することで、上記の戸籍謄本等の添付が原則不要となります。
・受診状況等診断書(初診時の医療機関と診断書を作成した医療機関が異なる場合、初診日の確認のため)
・病歴、就労状況等申立書(障害状態を確認するための補足資料)
・受取先金融機関の通帳等(本人名義)
18歳到達年度末までの子ども(20歳未満で障害のある子どもを含む)がいる場合
・戸籍謄本(子の請求者との続柄および氏名・生年月日の確認)
・世帯全員の住民票の写し(請求者との生計維持関係の確認)
・子の収入が確認できる書類(請求者との生計維持関係の確認。なお、義務教育終了前は不要、高等学校等在学中の場合は在学証明書、学生証のコピーなど)
※マイナンバーを記入することで上記の添付を省略できます
・医師、または歯科医師の診断書(20歳未満で障害のある子どもがいる場合)
↓
請求書の提出
・提出先は住所地の市区町村役場の窓口になります。なお、初診日が国民年金第3号被保険者期間中の場合は、お近くの年金事務所または街角の年金相談センターの窓口になります。
■障害厚生年金
年金請求書を取りに行く
・お近くの年金事務所または街角の年金相談センターの窓口に備え付けてあります。
↓
医師に診断書を依頼する(所定の様式あり)
・医師の診断書(障害認定日より3カ月以内の現症のもの。併せてレントゲンや心電図のコピーが必要な場合もあります)。
↓
必要な書類等を集める
・年金請求書、年金手帳などの基礎年金番号を明らかにすることができる書類(加入期間を確認)
・戸籍謄本、戸籍抄本、戸籍の記載事項証明書、住民票、住民票の記載事項証明書のいずれか(請求者の生年月日を確認できる書類)。
※単身者の方で、日本年金機構にマイナンバーが登録されている方は、上記の戸籍謄本等の添付が原則不要となります。マイナンバーが登録されていない方は、年金請求書にマイナンバーを記入することで、上記の戸籍謄本等の添付が原則不要となります。
・受診状況等診断書(初診時の医療機関と診断書を作成した医療機関が異なる場合、初診日の確認のため)
・病歴・就労状況等申立書(障害状態を確認するための補足資料)
・受取先金融機関の通帳等(本人名義)
配偶者または18歳到達年度末までの子ども(20歳未満で障害のある子どもを含む)がいる場合
・戸籍謄本(配偶者および子について、請求者との続柄および氏名・生年月日の確認)
・世帯全員の住民票の写し(請求者との生計維持関係の確認)
・配偶者の収入が確認出来る書類(生計維持関係の確認のため所得証明書、課税(非課税)証明書、源泉徴収票など)
・子の収入が確認できる書類(義務教育終了前は不要、高等学校等在学中の場合は在学証明書、学生証のコピーなど)
・医師、または歯科医師の診断書(20歳未満で障害のある子どもがいる場合)
↓
請求書の提出
・提出先は、お近くの年金事務所または街角の年金相談センターになります。
障害年金を請求してから、受給決定の結果が出るまでの期間
障害厚生年金、障害基礎年金とも、書類が受理されてから約3ヶ月で結果通知が送付されます。ただし、書類の提出後に追加書類等がある場合は、それ以上に時間がかかることもあります。
※障害年金は一度不支給になっても、何度でも請求可能です。 再請求する場合は、診断書、病歴就労状況等申立書などの書類を新しく用意して提出します。
障害年金を受給してから
障害等級1級または2級に決まった場合は、届け出をすることで、障害年金を受給している間の国民年金の保険料納付が免除されます。(「法定免除」といいます)
ほとんどの人が、1年から5年ごとに更新審査があるので更新手続きが必要になります。更新時期が近づくと3ヶ月前に「障害状態確認届」が郵送されてきます。診断書を医師に書いてもらい提出します。
最後は障害年金を受給されている中皮腫患者さんの例になります
・疾患名:腹膜中皮腫 ・性別:男性 ・請求時年齢:56歳 ・住所地:北海道札幌市 ・障害の状態:全身倦怠感、嘔気、食欲不振 ・決定等級:障害厚生年金2級 |
・疾患名:腹膜中皮腫 ・性別:男性 ・請求時年齢:45歳 ・所在地:北海道稚内市 ・障害の状態:大腸転移全摘出、小腸転移一部摘出、人工肛門造設 ・決定等級:障害厚生年金3級 |
・疾患名:胸膜中皮腫 ・性別:男性 ・請求時年齢:60歳 ・所在地:新潟県新潟市 ・障害の状態:全身倦怠感、食欲不振、胸痛 ・決定等級:障害厚生年金2級 |
・疾患名:胸膜中皮腫 ・性別:男性 ・請求時年齢:59歳 ・所在地:福岡県福岡市 ・障害の状態:呼吸苦、全身倦怠感、食欲不振、胸痛、在宅酸素療法 ・決定等級:障害厚生年金3級 |
■繰り返しになりますが、中皮腫はとても稀ながんであるため、障害年金の請求は難しく、ご自身で請求されて途中で諦めてしまう方もいます。中皮腫の障害年金請求に経験と実績のある社会保険労務士に相談されることをお勧めします。
■以下の講演ビデオも参考になります。
藤井啓道さん(社会保険労務士・行政書士)の講演動画「中皮腫と障害年金」
出典(参考文献)